アナウサギ(その他表記)Old World rabbit
Oryctolagus cuniculus

改訂新版 世界大百科事典 「アナウサギ」の意味・わかりやすい解説

アナウサギ
Old World rabbit
Oryctolagus cuniculus

家畜カイウサギ原種ウサギ目ウサギ科の哺乳類ヨーロッパ中西部と北アメリカ西部に分布。日本のノウサギに似るが,前肢が短く,このためすわった姿勢で肩と腰が同じ高さとなる。夏毛,冬毛とも褐色体長40cm前後,尾長4~7cm,体重2kg程度。ワレンwarrenと呼ばれる複雑な造りの大規模な巣穴を地中に集団で掘り,最高150匹もの個体がそこに集まって生活する。ワレンからはウサギ道がのび,夜間これを通って,おもに草,ときに樹皮小枝などを食べに出る。交尾期は1~6月で,妊娠期間28~33日。出産前に雌は育児用の巣穴をワレンの周辺部に掘り,ふつう1回で3~6子を生む。雌は授乳時のみこの巣穴に入り,あとは出入口を土でふさいでおく。肉と毛皮を利用する猟獣として価値が高いため,ニュージーランドオーストラリア南北アメリカなどに移入されている。いずれの土地でも爆発的に増殖し,植物を荒らす害獣となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナウサギ」の意味・わかりやすい解説

アナウサギ
あなうさぎ / 穴兎
rabbit
[学] Oryctolagus cuniculus

哺乳(ほにゅう)綱ウサギ目ウサギ科の動物。ヨーロッパ中部と南部、アフリカ北部に分布する。オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、南アメリカなどに移入され野生化したものは、農作物に甚大な被害を与えている。世界中で広く飼われているカイウサギは、本種から家畜化したものである。体長35~45センチメートル、体重1.3~2.3キログラム。前肢が短く、耳介の先端に黒色の部分がないことでノウサギと区別される。雌ウサギは出産に備えて、自分の腹から引き抜いた毛と柔らかい草を敷き詰めた育児巣をつくる。28~33日の妊娠期間ののち、3~9匹の赤裸で閉眼の子ウサギを産む。しかし環境が悪化したり、ストレスが加えられたりすると、妊娠雌は子宮の中で発育中の胎児を吸収してしまう。この割合は自然状態で少なくとも60%であると報告されており、本種の個体数調節に貢献している。食物は草や穀類であるが、栄養分を効率よく吸収するために、通常の糞(ふん)と交互に排出する粘膜に包まれた特殊な糞を食べる習慣がある。ノウサギが完全な単独生活者であるのに対し、アナウサギはグループで生活する。しかしこのグループは群れといえるほど組織化されておらず、半径数メートルの縄張りの集合体である。

[林 良博]

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「アナウサギ」の解説

アナウサギ
学名:Oryctolagus cuniculus

種名 / アナウサギ
科名 / ウサギ科
解説 / 飼いウサギの祖先で、現在では世界各地に広がっています。ふくざつな巣あなで集団生活をします。
体長 / 35~50cm/尾長4.5~7.5cm/耳長6.5~8.5cm
体重 / 1.5~3kg
食物 / 草、木の葉、樹皮、根
分布 / ヨーロッパとアフリカ北西部
絶滅危惧種 / ☆

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナウサギ」の意味・わかりやすい解説

アナウサギ
Oryctolagus cuniculus; Old World rabbit

ウサギ目ウサギ科。体長 35~45cm。耳や四肢が長く,眼は大きい。体の上面は淡褐色から黒色まで変化に富む。低木林や開けた土地などに穴を掘り,群れをつくってすむ。夜行性。草食性で,ときに小枝や樹皮などを食べる。本種はカイウサギの原種で,ヨーロッパ南西部からアフリカ北部が原産地であるが,いまではイギリス,フランス,ロシア,ニュージーランド,オーストラリア,南北アメリカにも移入され,野生化している。

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世界大百科事典(旧版)内のアナウサギの言及

【共生栄養】より

…齧歯(げつし)類ではこのような不都合は次のような変わった方法で補われている。アナウサギやノウサギの糞には昼型と夜型とがあって後者は盲腸の内容を含む特殊な糞で軽くて大きく軟らかい。ウサギは肛門から出るこの糞を食べる。…

※「アナウサギ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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