ハナグマ(読み)はなぐま(その他表記)coati

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナグマ」の意味・わかりやすい解説

ハナグマ
はなぐま / 鼻熊
coati
coatimundi

哺乳(ほにゅう)綱食肉目アライグマ科に属する2属4種の動物総称。中央・南アメリカの森林分布する。体のつくりは細く、樹上生活に適応している。体長40~67センチメートルで、細い尾も同じくらいの長さがある。頭部は細長く、鼻先はとくに長くなり、左右に自由に動かすことができる。雄は単独で暮らし、雌は10頭前後の群れをつくる。昼行性で、好物昆虫を鼻で探し出し、器用で力強い前肢で朽ち木などを壊してとる。小動物、卵、果実も食べる。雌は木の枝に巣をつくり、3~6頭の子を産む。ハナジロハナグマNasua naricaはアメリカ合衆国南部から中央アメリカに、アカハナグマN. nasuaは南アメリカに、コズメルハナグマN. nelsoniメキシコのコズメル島に、ヤマハナグマNasuella olivaceaコロンビアからベネズエラエクアドルにかけての高山に分布する。

[祖谷勝紀]

『今泉吉典監修『世界の動物 分類と飼育2 食肉目』(1991・東京動物園協会)』『E・T・シートン著、今泉吉晴監訳『シートン動物誌5 スカンクの社交術』(1998・紀伊國屋書店)』


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改訂新版 世界大百科事典 「ハナグマ」の意味・わかりやすい解説

ハナグマ (鼻熊)
coati
coatimundi

アライグマに似るが前頭部が平たく吻(ふん)が長い食肉目アライグマ科ハナグマ属Nasuaの哺乳類の総称。アリゾナからペルーに分布し,大型で,鼻づらが白いハナジロハナグマN.naricaが代表的。他に南アメリカ中・北部に分布し,やや小型で鼻づらが灰色のアカハナグマN.nasua,コズメル島のコズメルハナグマN.nelsoniの2種がある。体長41~67cm,尾長32~69cm,体重3~6kg。体背面は赤褐色から黒色まであり,腹面は黄褐色。尾にはふつう輪状斑がある。半砂漠,林内の岩石地など生息地は変化に富むが,森林を好み,雄は単独,雌と子は2~15頭の群れで生活する。巣は木のまたや岩陰に小枝や草を集めて作る。おもに昼行性で,地上でも樹上でも活動し,ミミズカタツムリ,トカゲ,ネズミなどの小動物やイチジクやマンゴーなどの果実を食べる。繁殖期は年1回で,妊娠期間70~80日の後,4~6月(パナマでの例)に1産2~7子を生む。寿命は飼育下で17年8ヵ月の記録がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナグマ」の意味・わかりやすい解説

ハナグマ
Nasua; coati

食肉目アライグマ科ハナグマ属の動物の総称。数種から成る。雄の体長 36~68cm,尾長は体長にほぼ等しい。雌はやや小型。鼻が長く突き出し,それをよく動かすことができる。尾には環状の模様があり,歩くときはこの尾をまっすぐに立てる。森林地帯にすみ,木登りがうまく,普通小さな群れをつくって行動する。雑食性で,果実をはじめ昆虫類,小鳥,卵などを食べる。アカハナグマ N. nasuaや,鼻先の部分が白いハナジロハナグマ N. naricaなどが,アメリカ合衆国南西部から南アメリカに分布している。

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百科事典マイペディア 「ハナグマ」の意味・わかりやすい解説

ハナグマ

食肉目アライグマ科ハナグマ属の哺乳(ほにゅう)類の総称。ハナジロハナグマは体長60cm,尾42cmほど。吻(ふん)は長くて先端が白くブタの鼻に似る。アリゾナ〜ペルーに分布。普通,森林にすみ木登りが巧みで,果実などのほかミミズ,トカゲ,昆虫,小鳥などを食べる。1腹3〜6子。よくなれるので現地ではペットにされる。他に南アメリカ中・北部に分布するアカハナグマ,コズメル島のコズメルハナグマがある。

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世界大百科事典(旧版)内のハナグマの言及

【鼻】より

…脊椎動物の頭の前部にある嗅覚器で,四足動物では呼吸器系の入口にもなっている中空の器官。外面に見える部分をさすことも多い。付属した部分も含めて一般に鼻器ともいう。
【動物の鼻】
 古生代の無顎(むがく)類に属した原始魚類には,外鼻孔つまり外界に開く鼻の入口を1対もつグループ(双鼻類)と,正中部に1個だけもつグループ(単鼻類)があった。後者のうち最もよく知られている頭甲類という仲間では,頭胸部をおおう堅固な骨性の装甲の背面で,両眼の中間に松果体孔,その少し前方に単一の外鼻孔external naresがあった。…

※「ハナグマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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