翻訳|skunk
食肉目イタチ科スカンク亜科Mephitinaeに属する3属9種の哺乳類の総称。黒色の地に白斑,あるいは白縞模様をもち,肛門腺から強烈な悪臭のある黄色の油状の分泌液を放出する獣として知られる。体はイタチ科の動物としてはずんぐりとしていて比較的太く,頭は小さく鼻先がとがる。四肢と尾は比較的長い。頭部を除き,体毛,とくに尾の毛は長い。肛門の両側に1対ある肛門腺は,袋状によく発達して,周囲の筋肉の働きで分泌液を放出する。液は皮膚に付着した場合には容易に洗い落とすことができ,特別な障害を起こさないが,目に入ると激痛と一時的な視力の消失をもたらす。イヌ,クマ,ピューマなどの天敵にも同様の効果がある。また,衣服に付着すると,使用に耐えなくなるといわれる。においの主成分はメルカプタン,とくにブチルメルカプタンC4H9SHである。悪臭は天敵からの護身に役だち,白色と黒色の目だつ体色は警告色としての効果をもつものと考えられる。事実,上記の哺乳類の捕食者は,一度スカンクの悪臭を経験すると以後スカンクを避けるようになり,スカンクのほうは捕食者がごく近くに接近するまで避けようとしない。ただし,ワシ,フクロウなどの猛禽類には効果がない。
北アメリカ,中央アメリカ,南アメリカの砂漠,草原,耕地,森林など人家付近を含めて至るところにすみ,雑食性で,はちみつを含む昆虫,トカゲ,毒ヘビを含むヘビ類,鳥類,小哺乳類,果実などを食べる。地中に掘った穴や人家の床下などをすみ家とし,交尾期は,北アメリカではおもに2~3月,南アメリカではおもに1月。妊娠期間は種によって大きく異なり,マダラスカンクでは120日,シマスカンクでは61~64日,ブタバナスカンクでは42日である。雌は4~10子を生む。子は45~50日で巣を離れ,母親について歩くようになり,次の繁殖期までともに過ごす。寿命は飼育下で8~10年。
主要種は次の4種である。(1)シマスカンクMephitis mephitis 体長39~41cm,尾長18~39cm。黒色の地に,体側に尾の基部に発する白色の縞があり,首または後頭部で左右の体側の縞があわさって1本になる。カナダからメキシコ北部に分布する。(2)セジロスカンクM.macroura シマスカンクに似るが,尾が長く,白い。体長27~35cm,尾長27~44cm。体側に明りょうに2本に分かれた白色の縞がある。アメリカ合衆国南部から中央アメリカに分布する。(3)マダラスカンクSpilogale putorius 黒地に白斑がある小型スカンク。体長11~35cm,尾長7~22cm。敵に襲われると逆立ちして警告する。カナダ南部から中央アメリカに分布する。(4)ブタバナスカンクConepatus mesoleucus(=S.pygmaea) 背中が白色の大型のスカンク。体長36~49cm,尾長27~41cm。鼻がブタに似て,幅広く,長く,裸出する。アメリカ合衆国から中央アメリカに分布する。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科スカンク亜科に属する動物の総称。シマスカンク属Mephitis2種、マダラスカンク属Spilogale4種、ブタバナスカンク属Conepatus7種の3属13種を含む。すべて南・北アメリカ大陸産で、ネコぐらいの大きさでふさふさした尾をもつ。体色は黒ないし黒褐色であるが、白の帯や斑(はん)をもつものが多い。
生態はいずれも共通していて、森林や草原にすみ、どちらかというと明るく開けた環境を好み、密林にはいない。家屋の近くへも姿を現す。夜行性で、ネズミやウサギ、小鳥やカメの卵、昆虫などのほか、植物性の餌(えさ)も食べる。毒ヘビに対しても抵抗性が強く、平気で攻撃し、餌とする。自分でも巣穴を掘るが、マーモットやウサギ、アルマジロなどの穴も利用する。このとき、先住者がいても攻撃せずに、共有する形で入り込んでしまうといわれている。スカンクどうしが一つの巣穴を共有することもある。北アメリカでの交尾期は2~3月、南アメリカでは8月ごろで、この時期の雄はむやみに歩き回り、気が荒くなって人間や家畜にかみついたりもする。妊娠期間はシマスカンク60日余り、マダラスカンク120日、ブタバナスカンク42日で、2~10頭の子を産む。生まれたばかりの子は閉眼で毛も生えていないが、縞(しま)や斑の模様は判別できる。6~8週間後になると、子は雌親に連れられて巣穴から出てきて自分で餌をとり、雌親が次の発情期に入ると親から離れる。飼育下の寿命は10年。
イタチ科の動物は肛門(こうもん)付近に大きな分泌腺(ぶんぴつせん)をもち、悪臭のある物質を出すが、スカンクはとくに有名である。スカンクでは分泌腺が大きく発達しているだけでなく、管の一部が膨らんで腔(こう)となっていて、分泌物を蓄え一度に発射することができる。このときスカンクは前足だけで逆立ちし、肛門を敵に向けて、顔をねらって発射する。液は4、5メートル飛び、敵の目に入ると一時的に盲目にする。主成分はブチルメルカプタンで、化学構造はアルコールに似ているが、酸素のかわりに硫黄(いおう)を含んだ物質である。ニンニク、ゴムや毛を焼いたにおい、二硫化炭素のにおいなどを混ぜたような悪臭で、1キロメートル以上も漂うという。皮膚に直接についた分泌物は洗い落とせるが、衣服についた場合はなかなかとれず、その衣服を捨てねばならないことが多い。スカンクはこの分泌物を数度続けて発射することができるが、あとになるほど量も少なく、においも弱い。スカンクの黒白の毛模様と独特の発射姿勢は敵に警戒を与えるのに役だっており、コヨーテやピューマはたいていの場合その姿勢を見ただけで逃走する。動物園などで飼育する際は手術で肛門腺を除去する。
[朝日 稔]
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