ハバクク書(読み)ハバククしょ(その他表記)Book of Habakkuk

改訂新版 世界大百科事典 「ハバクク書」の意味・わかりやすい解説

ハバクク書 (ハバククしょ)
Book of Habakkuk

旧約聖書の〈十二小預言者〉に属する預言書。この書の前半(1~2章)は預言で,後半(3章)は詩歌である。預言の部分は,エレミヤ初期の預言と似ており,カルデア人の恐るべき略奪を描く。これはエレミヤの場合と同様,騎馬民族スクテア(スキタイ)の活動を指すものであろう。これは横暴な者に対する神の審判であり,信仰者の救いにつながる。著作年代は前630年ころから,ヨシヤ王の宗教改革(前622)の間である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハバクク書」の意味・わかりやすい解説

ハバクク書
はばくくしょ
The Book of Habakkuk

『旧約聖書』中の十二小預言書の一つ。紀元前7世紀末ごろのエルサレムで活動した祭儀的預言者ハバククの語った預言集で、前609~前598年の間に成立した。内容は、第1章で預言者の嘆きと神の応答が2回ずつ繰り返され、間接的にエジプト圧政を訴えている。それに対して神は歴史的転換到来を暗示する。これは、前605年のカルケミシェの戦いでエジプトを破った後の新バビロニア帝国のネブカドネザルの台頭をさしていた、と解するのが最近の解釈である。続く第2章は、これまで恐るべき横暴を働いたカルデアバビロニア)人に対する災禍預言集となっている。最後の第3章には、神顕現の賛美の歌をもってカルデア人への終末的審判が預言されているが、この部分は1947年発見の『死海文書』にはない。

吉田 泰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハバクク書」の意味・わかりやすい解説

ハバクク書
ハバククしょ
Book of Habakkuk

旧約聖書 12小預言書中の第8書。預言者ハバククはおそらくエレミヤと同時代人であるが,ナホム同様その生涯についてはまったく不明。文学的類型としては,苦難の時代における祭儀上の礼拝式文であったらしい。新バビロニアの優勢下に,エホヤキム治下のユダは略奪と暴虐の巷と化していた。ハバククはまず第1~2章において,暴力と不正がはびこっている現状を神に訴え,神の裁きの道具としてカルデア人が用いられ,やがて悪人が滅び,義人が信仰によって生きるようになると預言する。次に第3章の祈りの部分で,出エジプトをはじめとする神の恵みの歴史を回顧しながら,神の憐れみが再び戻ってくることを願っている。

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世界大百科事典(旧版)内のハバクク書の言及

【狂歌】より

唐衣橘洲(からごろもきつしゆう),四方赤良(よものあから),朱楽菅江(あけらかんこう),元木網(もとのもくあみ),平秩東作(へずつとうさく),智恵内子(ちえのないし)らはその錚々たる者で,豊かな趣味教養と軽妙洒脱な機知とを併せもつ人々である。これに次ぐ江戸狂歌の第二世代として宿屋飯盛,鹿都部真顔(しかつべのまがお),頭光(つぶりひかる),馬場金埒の狂歌四天王があり,なかでも天明調の純正狂歌を主張する飯盛と,優美高尚な狂歌を主張して〈俳諧歌〉と称した真顔は,文政(1818‐30)に至るまで長くライバルとして活躍した。文政以後は芍薬亭長根,文々舎蟹子丸らが活躍した。…

※「ハバクク書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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