改訂新版 世界大百科事典 「ハワイ語」の意味・わかりやすい解説
ハワイ語 (ハワイご)
Hawaiian
ハワイ諸島で行われる原住民族の言語。系統的には,サモア語,タヒチ語,トンガ語,マオリ語などとともに,アウストロネシア語族のオセアニア語派中でいわゆる〈ポリネシア諸語〉を形成し,その北辺に位置する。
音韻面では,母音がa,e,i,o,uの五つ(長短の区別あり),子音がh,k,l,m,n,p,wおよび`(glottal stop)の八つとかなり少数であり,音節はすべて母音で終わる開音節である。
文法面では,動詞や名詞のさまざまな文法的関係を示す小辞particleの多用が特徴的であり,動詞を含む文での基本的な語順は,(小辞などを別にすれば)動詞+主語+目的語の順となる。例えば,〈私は彼女を愛する〉といった意味の文は,Ua aloha au iāia.,すなわち〈小辞・愛(する)・私(は)・彼女を〉のようにあらわされる。なお,uaは動詞に前置される小辞の一つで,次にくる動詞の動作がすでに起こっていること(completed action),を示している。また,オセアニア語派の諸語に特徴的な,所有関係にあらわれる名詞の〈ジェンダー(性)〉はハワイ語にも見られ,所有者がその被所有物をコントロールできると考えられるような場合にはa類が,そうでない場合にはo類が用いられる。例えば,ka`uとko`uはともに〈私の〉を意味するわけであるが,ka`u keiki〈私の子〉,ko`u kupuna〈私の祖父母(先祖)〉のように区別して用いられる。
ハワイ語はすでに近代以前から,多くの外来者の流入によって衰退をはじめており,アメリカ合衆国との併合以後は英語化が進んだ。今日,ハワイ語を話せる人の数はかなり少数にすぎない。
執筆者:渡川 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報