知恵蔵 「バイドゥIME」の解説
バイドゥIME
バイドゥIMEは、09年12月にBaidu Typeの名でベータ版が公開され、10年5月には現在の名で正式版が提供された。11年3月のリニューアル以降はBaiduIMEの名称となっている。キー入力を漢字などに変換する仕組みに、統計的言語モデルを採用しており、ウェブページなどの情報を元にして単語を予測する。若年層などを意識しているため流行語や人名などの固有名詞の変換に強く、口語や顔文字の入力にも対応する。また、文字入力をするエリアをユーザーの好きなデザインに変える「スキンきせかえ」や、画面をキャプチャして貼りつける「スクリーンショット機能」も搭載されている。11年6月には、エキサイト株式会社と提携開発した「BaiduIMEforエキサイト翻訳」、9月には株式会社ベクターの提供するソフトウエアダウンロードサイト「Vector」と連携させた「BaiduIMEfor Vector」なども提供。様々な利用目的に適した、検索性などを活かした日本語変換ソフトを目指した。12月には、アンドロイド用の日本語入力システム「Simeji(シメジ)」を取得して提供を始めた。
インターネットの接続を前提にするオンライン型のIMEでは、利用者の変換結果を外部サーバーに送って蓄積したり、外部サーバーにあるこれらのデータから変換候補を得たりするクラウド機能を備えているのは一般的な仕様である。この機能によって、効率的で良好な変換候補を得ることができる。しかし、外部に送信されては困る情報もこの機能によって勝手に送られてしまう恐れがある。したがって、情報を送信する機能は利用者の明確な承諾を得て有効になることが望ましい。ところが、これに逸脱するIMEがあると、13年12月に大手プロバイダーのインターネットイニシアティブ(IIJ)セキュリティ対応チームが指摘。「Simeji」には送信機能を無効にしていても打ち込んだ文字が送られるバグがあることが分かった。バイドゥ株式会社(バイドゥの日本法人)は、BaiduIMEでは情報の無断送信はないと説明した。同ソフトは別のフリーソフトに添えて配布されたり、新規購入したパソコンに初めからインストールされていたりする場合もある。このため、個人情報などの流出が懸念されるという報道を受け、同社はバージョンアップ版を提供することになった。また、官公庁や研究機関などでBaiduIMEを使っていたケースが多数発覚し問題となった。菅義偉内閣官房長官は、「政府としても危険性は承知している。このソフトを利用して機密を有する情報を外部に送信することは、情報セキュリティ政策会議決定である統一管理基準上、禁止している行為」と会見で述べている。外務省内でもBaiduIMEがインストールされた端末が5台確認されたが、確認された時点で削除したとしている。
(金谷俊秀 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報