オーストリア社会民主党左派の指導者。ウィーン大学で法律を学び,在学中,K.レンナー,M.アードラー等と親交を結ぶ。V.アードラーに師事し,1907年から機関紙誌《アルバイター・ツァイトゥング》《闘争》の編集に従事。第1次大戦中出征し,ロシアで捕虜となり,17年帰国。18年11月のV.アードラーの死後,19年7月まで共和国外相としてドイツへのオーストリアの併合に努力したが,サン・ジェルマン条約によって併合は禁止された。19年社会化委員会議長。20-34年まで社民党代議士。34年2月蜂起を指導し,チェコスロバキアのブリュンに亡命。〈革命的社会主義者〉グループを組織する。パリで死去。オーストリア・マルクス主義の代表的理論家である。
執筆者:酒井 晨史
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オーストリア社会民主労働者党の政治家。ユダヤ人繊維工場主の子としてウィーンに生まれる。ウィーン大学に学んだのち、1907年以来、同党の『労働者新聞』、理論誌『闘争』の編集者となり、オーストリア・マルクス主義の理論家、とくに民族問題の分析で知られた。第一次世界大戦でロシア軍の捕虜となり、帰国後、同党左派の指導者となったが、ボリシェビズムには反対、1918~1919年、外相として年来の構想であるドイツとの合併に尽力、1926年には同党のリンツ綱領の作成に寄与した。1934年2月のドルフュス政権に対する抵抗が挫折(ざせつ)したのち、チェコのブリュン(現ブルノ)に逃れて闘争を継続したが、1938年ヒトラーの進駐によってパリに移り、同年7月4日急死した。
[松 俊夫]
ドイツの哲学者。ベルリン大学で神学と哲学を修めたのち、同大学とボン大学で神学を講義。当初正統ヘーゲル主義者としてD・シュトラウス批判を行ったが、のちヘーゲル左派に転じ、無神論的立場から宗教批判を展開し、教授資格を奪われた。とくに、福音(ふくいん)は宗教的自意識の産物ないし文学作品と説いて注目される。1877年の『キリストとローマ皇帝』はマルクス主義思想やニーチェの宗教観に大きな影響を与えた。啓蒙(けいもう)思想やフランス革命やドイツの市民革命に関する歴史書も著す。政治的には三月革命後『クロイツ・ツァイトゥンク』紙に協力するなど保守派に接近した。
[末川 清 2015年3月19日]
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1882~1938
オーストリア・マルクス主義の指導的理論家。オーストリア社会民主労働者党左派の指導者。1918~19年オーストリア共和国外相としてドイツ‐オーストリア合邦の実現に努めた。34年のウィーン蜂起失敗後に亡命。
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… ヘーゲルが疎外という彼岸性を克服すべく提起したものは,(1)人間存在の共同性が社会意識によって疎外されるのではなく,自覚化されるような真の共同社会の実現,(2)宗教という疎外の極限形態の〈絶対知〉への止揚,(3)たんに義という本質(普遍)の支配ではなくて,〈ゆるし(和解)〉という,普遍と個の生きた媒介という内容であった。
[ヘーゲル左派における用法]
B.バウアーが〈自己疎外〉という用法を用いたとき,人間の本質は自己意識であり,神はその人間の疎外態であるという意味が明確になった。つまりヘーゲル解釈を宗教批判の方向にすすめたのである。…
…すると,人格性と不死は虚妄となってしまうと彼は考えた。右派の一人にB.バウアーがいた。彼は先輩格の牧師マールハイネケP.K.Marheinekeに委嘱されて,ヘーゲルの《宗教哲学講義》の第2版を編集していた。…
…
[マルクス主義とユダヤ人]
ユダヤ教徒解放をめぐる論議に触発されて《ユダヤ人問題によせて》を著したマルクスは〈ユダヤ教徒の社会的解放はユダヤ教からの社会の解放である〉という論理を提示し,やがてそこからプロレタリアートの解放こそが普遍的・人間的解放であるとの立場に移行することになる。そこでは,ヨーロッパ啓蒙思想に内在し,ヘーゲル左派のB.バウアーによって明示されたユダヤ教徒解放否定の論理,すなわちキリスト教より低い発展段階にあるユダヤ教徒はそのままではついに解放されえないし,解放されうるとすれば彼らのキリスト教徒への改宗を通じてであるという議論はなお完全に克服されるにはいたっていない。その結果,19世紀末から20世紀初頭のマルクス主義的社会主義運動は,資本主義体制への批判と社会改革の要求を掲げる反ユダヤ主義運動を〈自動的社会主義〉(エンゲルス)あるいは〈愚者の社会主義〉と嘲笑的に批判するにとどまり,資本主義の発展が貫徹するとともに同化が進み,これに応じて古くさい偏見に基づく反ユダヤ主義もまた消滅するであろうと楽天的な見方を捨てなかった。…
※「バウアー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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