バウアー(読み)ばうあー(英語表記)Bruno Bauer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バウアー」の意味・わかりやすい解説

バウアー(Otto Bauer)
ばうあー
Otto Bauer
(1881―1938)

オーストリア社会民主労働者党の政治家。ユダヤ人繊維工場主の子としてウィーンに生まれる。ウィーン大学に学んだのち、1907年以来、同党の『労働者新聞』、理論誌『闘争』の編集者となり、オーストリア・マルクス主義の理論家、とくに民族問題の分析で知られた。第一次世界大戦でロシア軍の捕虜となり、帰国後、同党左派の指導者となったが、ボリシェビズムには反対、1918~1919年、外相として年来の構想であるドイツとの合併尽力、1926年には同党のリンツ綱領の作成に寄与した。1934年2月のドルフュス政権に対する抵抗挫折(ざせつ)したのち、チェコブリュン(現ブルノ)に逃れて闘争を継続したが、1938年ヒトラーの進駐によってパリに移り、同年7月4日急死した。

[松 俊夫]


バウアー(Bruno Bauer)
ばうあー
Bruno Bauer
(1809―1882)

ドイツの哲学者ベルリン大学で神学と哲学を修めたのち、同大学とボン大学で神学を講義。当初正統ヘーゲル主義者としてD・シュトラウス批判を行ったが、のちヘーゲル左派に転じ、無神論立場から宗教批判を展開し、教授資格を奪われた。とくに、福音(ふくいん)は宗教的自意識の産物ないし文学作品と説いて注目される。1877年の『キリストローマ皇帝』はマルクス主義思想やニーチェの宗教観に大きな影響を与えた。啓蒙(けいもう)思想やフランス革命やドイツの市民革命に関する歴史書も著す。政治的には三月革命後『クロイツ・ツァイトゥンク』紙に協力するなど保守派に接近した。

[末川 清 2015年3月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バウアー」の意味・わかりやすい解説

バウアー
Bauer, Otto

[生]1882.9.5. ウィーン
[没]1938.7.4. パリ
オーストリア社会民主党の指導的理論家。 F.アードラーとともに『デア・カンプ』誌を創刊し,K.カウツキーの『ディ・ノイエ・ツァイト』誌に協力。 1904年社会民主労働党国会議員団書記。 07年『アルバイター・ツァィトゥング』紙の主筆。第1次世界大戦中にロシア軍の捕虜となり,ボルシェビズムを学び,17年帰国後は党左派の指導者となった。 18~19年外相となり,ドイツとオーストリア合邦の実現に努め,19年ドイツの B.ランツァウ外相と秘密の合併書に調印した。その後 M.アードラーとともにマルクス主義の指導者となり,共産主義と社会民主主義の分裂に対し調停的立場から労働戦線の統一に努めた。 29年国民議会議員となったが,34年ウィーン蜂起失敗後,亡命してチェコスロバキア,フランスから党を指導した。

バウアー
Bauer, Bruno

[生]1809.9.6. アイゼンベルク
[没]1882.4.13. ベルリン近郊
ドイツの神学者,哲学者,歴史家。ヘーゲルの弟子。ヘーゲル右派から,のち左派に転じ,極端な無神論の立場を取った。 1839年ボン大学教授となったが,42年過激な聖書批判のため同大学を追われた。主著『ヨハネ福音史批判』 Kritik der evangelischen Geschichte des Johannes (1840) ,『共観福音書著者の福音史批判』 Kritik der evangelischen Geschichte der Synoptiker (41~42) 。

バウアー
Bauer, Walter

[生]1877
[没]1960
ドイツのプロテスタント神学者。ブレスラウ,ゲッティンゲンの各大学助教授を経て,1919年ゲッティンゲン大学の教授に就任。新約聖書のギリシア語研究に貢献した。主著『ヨハネによる福音書』 Das Johannesevangelium (1912) ,『アンチオキアのイグナチウスの書簡とポリュカルポスの書簡』 Das Briefe des Ignatius von Antiochia und der Polykarpbriefe (20) 。

バウアー
Bauer, Wolfgang

[生]1941.3.18. グラーツ
オーストリアの劇作家。ハプニングや即興劇などの前衛的手法と伝統的な民衆劇の劇作法を組合せながら,現代社会の断絶の深さや混乱を描く。代表作『マジック・アフタヌーン』 Magic Afternoon (1968) ,『チェンジ』 Change (69) 。

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