自己自身を志向的対象とするような意識の総称。近代ヨーロッパ哲学で原理的な役割を占めたことばである。中世的な神中心の思想から人間主体を中心に考えていく際に、哲学的な概念としては自己意識が使われた。発端はデカルトの「われ思う、故にわれ在り」の思想で、いっさいの疑いを克服する確実なものの根拠が人間の自己意識に据えられた。カントにおいては、この「われ思う」という自己意識の統一性が、多様な表象を一つのまとまりある経験へもたらすものとして位置づけられた。カントの自我概念はフィヒテに至ってさらに首尾一貫化されて全面化され、ヘーゲルへと受け継がれていった。
ヘーゲルにおいては、自己意識の自我が、私一個人の個別的な意識から普遍的な意識にどのように達しうるかが正面から提起されるようになった。こうして人間の主体性に真理の根拠を探るという近代哲学の流れは、自己意識の普遍性の成立を求めて相互主観性の問題へと進み、イデオロギー、言語、生活世界といったものへと探究の方向を向けることになった。
[佐藤和夫]
…コギトはもともと〈考える〉とか〈意識する〉という意味のラテン語cogitareの一人称単数形にすぎないが,今日ではむしろ〈自己意識〉を含意し,精神や自我の本質を自己意識に見ようとする立場と結びつけて語られる。かつてデカルトが《方法叙説》(1637)の中で,絶対不可疑の真理を発見すべく,まずあらゆるものを疑ってみるという〈方法的懐疑〉から出発し,その結果〈そう考えている私は何ものかでなければならぬ〉として〈われ思う,ゆえにわれ在りJe pense,donc je suis〉の命題に到達し,これを〈哲学の第一原理〉と呼んだことに由来する(コギト・エルゴ・スムcogito,ergo sumはその命題のラテン語訳)。…
※「自己意識」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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