日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
オーストリア・マルクス主義
おーすとりあまるくすしゅぎ
Austro-marxismus ドイツ語
20世紀初頭にオーストリアで形成されたマルクス主義の一潮流で、オーストリア社会民主党の主流となり、第二インターナショナルでも大きな影響を与えた。代表的理論家・指導者に、3人のアドラー(フリードリヒ、マックス、ビクトル)、ヒルファーディング、レンナー、バウアーらがいる。哲学的にはマルクス主義の新カント主義的再解釈を試み、革命的実践における道徳的理想の問題や、カントの認識論によるマルクス主義の基礎づけの問題などを提起した。独占資本主義によって生まれた新しい経済現象や、当時のオーストリアの複雑な民族問題に取り組み、独自の経済理論、文化論、民族国家論を展開し、また基幹産業の「社会化」という注目すべき思想を生み出した。従来、正統派マルクス主義によって日和見(ひよりみ)主義として批判されてきたが、最近は西欧マルクス主義などから再評価されつつある。
[池田光義]