日本大百科全書(ニッポニカ) 「バハール」の意味・わかりやすい解説
バハール
ばはーる
Muammad Taqī Bahār
(1886―1951)
イランの詩人。桂冠(けいかん)詩人の子としてメシェッドに生まれ、7歳から作詩を始めた天才的詩人。18歳のときカージャール朝から桂冠詩人の称号を受けたが、立憲革命運動にくみし宮廷との関係を絶ち、専制政治を批判し愛国的な詩を発表して同胞に強く訴えた。古典詩の伝統を保持し、20世紀前期最大の詩人と評される。代議士、文部大臣も務め政治的にも目覚ましく活躍したが、晩年は詩人、学者としての生涯を過ごした。二巻からなる『バハール詩集』は頌詩(しょうし)、叙情詩が主体で、自由、独立、自然、社会批判、愛国をテーマとする作が多い。評論『ペルシア文体論』三巻はこの分野における最高傑作と目される。
[黒柳恒男]