改訂新版 世界大百科事典 「バルマー」の意味・わかりやすい解説
バルマー
Johann Jakob Balmer
生没年:1825-98
スイスの数学者,物理学者。バーゼルラントの生れ。カールスルーエとベルリンで数学を学び,1849年にサイクロイドに関する研究によってバーゼル大学で博士号を取得。59年から死ぬまでバーゼルの女子中等学校に,また,65年からはバーゼル大学の時間講師も務めた。当時,元素スペクトルの測定された波長は,音響学とのアナロジーから,単純な調和比をもつものと考えられていた。しかし,A.シュスターが81年にその考えの不適性を示したこともあって,バルマーは,A.J.オングストレームの測定した水素原子の4本の輝線スペクトルの波長をもとに,85年その波長λがλ=am2/(m2-n2)の式で表されることを示した。このとき,n=2,a=3645.6×10⁻8cmで,m=3,4,5,6であったが,nの値を2以外の整数値にするならば,紫外や赤外の領域のスペクトル系列にも適用できるだろうと推測していた。こうしたスペクトル系列の発生機構は,20世紀初頭の原子構造の解明をまって初めて明らかにされる。
→原子スペクトル
執筆者:日野川 静枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報