翻訳|analogy
〈比例〉を意味するギリシア語analogiaに由来する言葉。当初は数学用語だったが,プラトン以後は哲学の分野で用いられ,類推,類比,比論などと訳される。論理学の用語としては〈同義性univocation〉つまり同一の言葉が同一の意味で用いられること(人間,馬,犬などが動物であると言われる場合)と,〈異義性equivocation〉つまりまったく異なった意味で用いられること(ある星座と動物がともに〈犬〉と呼ばれる場合)の中間を意味する。アナロジーによる推論は,既知の部分的類似にもとづいて未知の類似へと論を進める推論形式で,演繹や帰納のような確実性はそなえていないが,みのり豊かな発見の方法として種々の学問分野で用いられる。多くの詩的表現や比喩,たとえば〈微笑む草原〉〈人生の秋〉などは比例的なアナロジーにもとづくものであり,また〈健康〉という言葉が人間自身,および彼の顔色,尿,生活環境,食物,医薬などについて異なった意味で語られる場合,それら多様な意味は人間自身について語られる〈健康〉への関係において統一されているかぎりにおいてアナロジー的である。これにたいして本来的な哲学的アナロジーは美,善,真,一,存在など,特定の〈類genus〉を超えて用いられる〈超越的名辞transcendental term〉に関して見いだされる。これらの名辞は,〈実体〉〈量〉〈質〉〈関係〉などの〈類〉もしくは〈カテゴリー〉の枠を超えて,また有限的存在と無限的存在の区別を超えて,根元的に異なっていながら何らかの意味の同一性を保ちつつ,つまりアナロジー的に述語されるが,それらのなかで〈存在ens〉が中心的位置をしめるところから,〈存在のアナロジー的性格〉つまり〈存在の類比analogia entis〉が強調されることになる。〈存在の類比〉は人間の認識能力が神もふくめてすべての存在するものにたいして開かれていることの論理的表現であるが,それは神の測りつくし難さを否定するものではない。〈存在の類比〉が経験世界と神との連続性を安易に肯定する立場に堕するとき,〈信仰の類比analogia fidei〉により神の絶対的な他者性を主張するK.バルトの批判が適中する。
→類推
執筆者:稲垣 良典
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…このころG.L.キュビエから強い影響を受ける。しかし一方でドイツ自然哲学で支配的であった原型archetypeの説もとりいれ,ジョフロア・サン・ティレールの影響を受けて相似analogy,相同homologyという比較生物学上重要な概念を確立した。C.ダーウィン,T.H.ハクスリーヘの敵対者として知られる。…
…生物学用語。類縁関係の遠い異種の生物において,個体発生上まったく別の起源から発生し,したがって系統発生的にも無関係の祖先型から別々に生じたものでありながら,一見類似した形態と機能をもつ器官が見られるとき,この類似を相似という。器官の形態と機能が異なっても,その起源が同じであることを指す〈相同〉と対をなすことばで,生物界における類似性を説明する概念の一つ。類似の生活様式をもつ類縁の近い生物の相同器官は,ふつう類似した形態と機能をもつが,この現象はむしろ自明のことであり,相似とはいわない。…
…人間は,これらの経験の中で現在の問題状況にもっとも類似しているものを引き出し,それを用いて問題解決を行う場合もある。このような問題解決は類推(アナロジー),〈事例に基づく推論〉と呼ばれている。たとえば,電気回路の問題を考えるときに,水の流れについての経験を用いる,あるいはあるレストランの料金を考えるときに,それとよく似たレストランの料金を思い出す,などは類推による問題解決といえる。…
※「アナロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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