日本大百科全書(ニッポニカ) 「バークレイズ銀行」の意味・わかりやすい解説
バークレイズ銀行
ばーくれいずぎんこう
Barclays Bank PLC
イギリスの大手民間銀行。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、ロイズTSB銀行、HSBCとともにイギリス四大銀行の一つに数えられる。
17世紀後半、ロンドンのシティの一角には金細工師を兼ねた金融業者たちが王室と商人たちを相手に事業を行っていた。1690年、ロンドンのロンバード街にフリームJohn FreameとグールドThomas Gouldが開業したのもそのような小規模な金融会社の一つであった。バークレイの名は、共同経営者であり、1736年にフリームの娘と結婚したバークレイJames Barclayの名からとられた。
1858年に株式銀行の有限責任性が認められてから銀行の設立が相次ぎ、合併も多くなった。このような状況を背景に1896年、東部イングランドやロンドンで活動していた20の個人銀行を統合してバークレイ・アンド・カンパニーBarclay and Companyという株式銀行が発足した。新銀行は182の支店を有していたが、その後も買収を通じてイングランドからスコットランドへと拡大し、全国規模の支店網を確立していった。1918年、バークレイズ・バンク・リミテッドBarclays Bank Limitedに名称変更。1925年、バークレイズが株を保有していた海外に拠点を有する3行を買収、統合してバークレイズ・バンク(DCO)Barclays Bank(Dominion, Colonial and Overseas)を設立、積極的に海外進出を図った。
第二次世界大戦後の1954年にはバークレイズ・バンク・DCO=Barclays Bank DCOと改称、1968年にはその後身であるバークレイズ・バンク・インターナショナルBarclays Bank International Ltd.(略称BBI)が設立され、国際業務を担当することになった。1969年には国内の主要銀行であったマーチンス銀行Martins Bankを合併。1982年、現名称に変更。1985年、BBIの国際業務と国内業務はバークレイズ銀行が統轄することとなり、グループの持株会社としてバークレイズ社Barclays PLCが創設された。
この間、1959年にイギリスの銀行としては初めてコンピュータ使用の帳簿管理を導入し、1966年にはイギリスで最初のクレジットカードであるバークレイカードを発行した。また翌1967年には世界で初めてオフラインCD機を6店に設置、銀行業務に最新技術を導入する試みを実行した。バークレイカードは現在、ヨーロッパで最大級のクレジットカードとなっている。
業務内容は一般銀行業務のほか、一般小口金融、サービス保険業、国際的な投資銀行業務など幅広く展開している。投資銀行業はバークレイズ・デ・ゼット・ウェド社Barclays de Zoete Wedd Ltd.(略称BZW)が担当していたが、1997年決算で2億ポンド余の欠損を計上、1997年11月に業務の大半をスイスのクレディ・スイスグループの投資銀行クレディ・スイス・ファースト・ボストンに売却した。残された業務は、1998年1月に新設されたバークレイズ・キャピタルBarclays Capitalに移された。
2008年の総資産は2兆0529億8000万ポンド、貸出金は5095億2200万ポンド、純資産は474億1100万ポンド、従業員数約15万6000人。2008年時点で、イギリス国内で1700の支店、1500万人の個人顧客、66万人の小規模企業顧客を持する同国最大規模のリテール・バンキング(小口取引)部門を有している。また、海外50か国以上で3158か所の支店・系列販売店を展開している。日本には、1972年に信託銀行バークレイズ・グローバル・インベスターズBarclays Global Investers(略称BGI)の東京支店が開設されたのが進出の原点である(2009年12月ブラックロック・ジャパンに経営統合された)。アメリカのサブプライムローン問題を契機とする世界金融危機において、2008年7月に三井住友銀行がバークレイズの第三者割当増資の一部(約1060億円)を引き受けた(出資比率約2%)。一方で、同年9月には、バークレイズは同月破綻(はたん)したリーマン・ブラザーズの北米における投資銀行・資本市場事業を買収している。
[上川孝夫・佐藤秀樹]