株式会社が新株の発行により資金調達を行う増資形態の一種。ほかの増資形態には公募増資、株主割当増資がある。第三者割当増資は、既存株主以外の第三者、たとえば株式を発行する会社の役員・従業員、親会社、銀行等の取引金融機関、取引先等の関連企業など、発行会社と縁故関係にある特定の主体に新株引受権を与えるものである。このため、縁故募集ともよばれる。
第三者割当増資は、かつては役員や従業員などに額面で割り当てる功労株としての意味合いがあった。しかし、国際化の進展などを背景に、今日では友好的な特定株主の増加が安定株主として機能するという側面が意識されるようになり、外資系企業などによる敵対的買収に対する防衛策として利用される傾向にある。また、経営状態が悪化し、株価が低迷している企業は、ほかの形態による増資が実質的に困難であることから、そうした企業が経営支援を仰ぐために実施するケースも多く認められる。
第三者割当増資は取締役会の判断で行うことができるが、第三者に時価よりも低い価格で行う新株発行は、既存株主の利益を毀損(きそん)することになるため、基本的には時価発行が選択される。ただし、買収防衛などの目的の場合には、友好的な特定主体に時価よりも低い価格で新株を割り当てる、いわゆる有利発行が行われることもある。有利発行を選択する場合には、株主総会における特別決議が必要であり、発行会社には株主総会の場でその理由を説明して既存株主の承認を得るという一定の制約が課せられている。
[高橋 元 2015年3月19日]
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(熊井泰明 証券アナリスト / 2007年)
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…有償増資は新株を引き受ける者を募集し,その引受価額を現金または現物出資によって払い込ませる一般的な増資方法である。増資はまた新株引受権の募集方法によって,(1)株主割当増資,(2)公募増資(時価発行増資),(3)第三者割当増資に分かれる。 株主割当増資は株主に新株引受権を与え,(既存)株主から新株主を募集する方法で,日本では公募増資が定着する以前はほとんどの増資がこの方法によって行われた。…
※「第三者割当増資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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