翻訳|virginal
15世紀末から18世紀にかけてヨーロッパで用いられた鍵盤付撥弦楽器の一種。ハープシコードやスピネットと同族の楽器で発音機構も同じであるが,一般に弦が鍵盤と平行に走っているものをいう。ただし16~17世紀のイギリスではバージナルという語は鍵盤付撥弦楽器の総称として用いられていた。バージナルの語源についてはラテン語のvirgo(処女)やvirga(棒)など諸説があるが定かでない。外形は,長方形の箱形のものがよく知られているが,実際は多様でスピネットと大差ない。長い方の一辺に鍵盤が備えつけられるが,それが中央より右方にあるものをミューズラー型,左方にあるものをスピネット型と呼ぶ。音域は通常4オクターブ。とくに16~17世紀のイギリスで愛好され数多くの作品が書かれた。W.バード,ブルJohn Bull(1562ころ-1628),ギボンズの作品を集めたアンソロジー《パーセニアParthenia》(1612-13ころ)などが有名である。
執筆者:津上 智実
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15世紀末から18世紀にかけてヨーロッパで愛好された小形の鍵盤(けんばん)楽器。チェンバロと同じく弦を掻(か)いて音を出すが、小形で横長の長方形胴をもち、弦が鍵盤と平行に(横方向に)張られている点がチェンバロと異なる。音域は4オクターブで、弦は1系列のみ。脚付きタイプと、脚がなく卓上や膝(ひざ)の上にのせて演奏するタイプがある。16世紀にはイギリスで家庭用に愛好され、バードやギボンズらが多くの作品を残している。同じく小形の鍵盤楽器であるスピネットも、16世紀にイタリアで流行しヨーロッパ全域に広まった楽器であるが、これは翼形の胴をもち、弦が左前方から右後方へ斜めに張られている点がバージナルと異なる。しかし、この区別はかならずしも絶対的ではなく、しかも音楽的特性の面からは両者は同一と考えて差し支えない。
なお、イギリスでは17世紀までは、弦を掻いて発音する鍵盤楽器を総称してバージナルとよんでいた。
[前川陽郁]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この点が,ハンマーで弦を打って音を出すピアノとは大きく異なり,まったく別種のタッチを必要とする。弦を鍵盤と直角に張った現代のグランド・ピアノに似た形であるが,広義には弦の張り方が異なるスピネットやバージナルをも含めてハープシコード族と呼ばれることもある。図に示したように,鍵を打つと鍵の向こう端に立つジャックが飛び上がり,その側面に突き出た鳥の羽軸または革製のプレクトラムが弦を弾き鳴らす。…
※「バージナル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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