リュート属撥弦(はつげん)楽器。全長約60センチメートルで、背の大きく膨らんだ胴とフレット付きの短い棹(さお)をもつ。現在おもに用いられているマンドリンは、19世紀後半に改良されたナポリ式で、スチール弦を複弦の4コースに張り、G3―D4―A4―E5に調弦する。弦は表板の下から表板上の駒(こま)を通り、やや後方へ湾曲した糸蔵(いとぐら)まで張られる。半音間隔にフレットを並べた指板は棹から響孔のところまでつけられており、足を組むか、足台を用いふとももに楽器をのせて固定し、薄板のプレクトラム(爪(つめ)、ピック)で演奏する。とくにトレモロ奏法が特徴的である。また、背面の平らなフラット・マンドリンは、アメリカのカントリー音楽であるブルー・グラスに欠かせない楽器となっている。
マンドリンと同類でマンドリンよりも大形の楽器――マンドラ、マンドセロ、マンドベースもあり、この順に音域が低くなる。ただし、そもそもマンドラとは、マンドリンが現れる前からあるリュートの一種で、マンドリンは、17世紀ごろに、その名が示すとおり(小さいことを示す語尾がつけられている)小形のマンドラとして生まれた。マンドリンはイタリア各地でさまざまなものがつくられたが、そのうちおもなものはミラノ式とナポリ式である。19世紀末まで用いられたミラノ式マンドリンはリュートとほぼ同じ外形で、糸巻のある糸蔵は後方に曲がり、表板上に糸留めがある。弦はガット製で、17世紀には複弦6コース、18世紀には単弦6本で、直接指ではじかれた。
マンドリンは、まずイタリアで好まれた楽器であり、ビバルディはマンドリンと管弦楽のための協奏曲を作曲した。また、同じころグレトリー、パイジェッロ、モーツァルトが、オペラのなかで、いずれもセレナードにマンドリンを用いており、この楽器の性格についての当時の意識がうかがわれる。それ以外のおもな例としては、ベートーベンがマンドリンとチェンバロのための2曲のソナチネを書いているほか、シェーンベルクの室内楽曲『セレナード』(作品24)などの現代曲でも用いられている。
日本へは明治時代に輸入され、比留間賢八の指導の下、大学生による合奏団が多くつくられ、第二次世界大戦前に洋楽普及の一端を担った。現在では明治大学マンドリン倶楽部(くらぶ)が有名である。
[前川陽郁]
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リュート属の木製撥弦楽器。全長60cmほど,胴体の背が丸く隆起しており,横板をもたない。弦は複弦4対で,プレクトラム(義甲,ピック)を用いて弾くため本質的に旋律楽器で,とくにトレモロ奏法が印象的である。調弦法はバイオリンと同じ5度間隔をとる。18世紀ころにリュート属の一型マンドーラmandoraから分かれてできたもので,4複弦のナポリ式,6複弦のミラノ式があったが,後者はまもなく衰え,前者は19世紀後半に改良が行われて,今日まで盛んに用いられている。日本には明治時代に輸入された。ギターほか低音楽器を加えたマンドリン合奏団の形が目だつが,独奏用にも用いられ,ビバルディ,ベートーベンのオリジナル作品など古典的な楽曲も存在する。歌の伴奏,合奏などにこれを用いた作曲家も少なくなく,モーツァルト,ベルディ,マーラー,シェーンベルクなどが例に挙げられる。
執筆者:浜田 滋郎
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…長さはふつう3cmほどであるが,注射筒が大きいほど針は長く,深部に注入するためにとくに長いものがある。注射針には細い針金が入れてあり,使用に際して抜くが,これをマンドリンという。しかし近年は血清肝炎などの関係から,使い捨て可能なプラスチック製のものが多く使われるようになっている。…
※「マンドリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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