日本大百科全書(ニッポニカ) 「パイロクロア」の意味・わかりやすい解説
パイロクロア
ぱいろくろあ
pyrochlore
ナトリウム、カルシウム、ニオブの複酸化物で少量の水分あるいはフッ素を含む。化学組成変化が複雑で理想式通りのものはほとんどなく、つねにCa>Naである。タンタル(Ta)置換体はマイクロ石microlite(化学式NaCaTa2O6(OH,F))でこれとともにパイロクロア‐マイクロ石系を構成する。自形は正八面体を基調とする立体。花崗(かこう)岩ペグマタイト、霞石(かすみいし)閃長岩(せんちょうがん)ペグマタイト中、ある種のグライゼン中などに産し、またカーボナタイト中で濃集しニオブ鉱床を形成することもある。日本では福岡県糸島市志摩御床(しまみとこ)のペグマタイトから報告されている。
ペグマタイト中での共存鉱物は、微斜長石、石英、白雲母、ジルコン、鉄コルンブ石など。同定は形態、弱い放射能の存在。その名のように焼くと緑色に変色する。英名中パイロpyroは熱、クロアchloreは緑色を示すギリシア語で、焼くと緑色に変色することによりこの名がつけられた。
[加藤 昭]