日本大百科全書(ニッポニカ) 「パオトウ」の意味・わかりやすい解説
パオトウ
ぱおとう / 包頭
中国、内モンゴル自治区中南部の地級市。市名はモンゴル語の「ブクト(シカのいる場所)」に基づく。トゥムチョン平原と後套(こうとう)平原の間に位置し、南は黄河(こうが)に臨む。市はホンドロン区、青山(せいざん)区、東河(とうが)区、九原(きゅうげん)区、石拐(せきかい)区、バインオボ鉱区の6市轄区からなり、トゥムド右旗、ダルハンムミンガン連合旗の2旗(県級行政区)と固陽(こよう)県を管轄下に置く(2016年時点)。人口282万9000(2015)。
自治区最大の都市で経済の中心である。1730年代には数十戸の村落にすぎなかったが、清(しん)朝の支配が浸透するにつれて発展した。1922年京包線(北京(ペキン)―パオトウ)が開通すると、水陸交通の拠点として人口が急速に増大し、1923年にパオトウ設置局が置かれ、1926年にはパオトウ県に改められた。1938年、パオトウ県の市街地を分離して、パオトウ市が設けられた。周辺は石拐溝の石炭、バインオボの鉄、レア・アース(希土類元素)などの地下資源に富み、この好条件を利用して、中華人民共和国成立後、工業が大いに発展した。パオトウ鋼鉄公司(コンス)があり、「草原の鉄鋼都市」とよばれる。ほかに、アルミ精錬、セメント、製糖、皮革、紡績などの工業がある。
北京からの京包線がこの地で蘭州(らんしゅう)へ向かう包蘭(ほうらん)線と接続し、北京から西北地区への交通の要(かなめ)となっているほか、北方のバインオボへ包白線が、南方の陝西(せんせい)省神木(しんもく)へ包神線が延びる。黄河を利用した水運は、上流では寧夏(ねいか)回族自治区の中衛(ちゅうえい)へ、下流では山西省の偏関(へんかん)へ達する。空運では、パオトウ空港から北京、蘭州、西安(せいあん)などへの航空路が開かれている。こうして、パオトウは西北地区の家畜、毛皮、食料、漢方薬の重要な集散地ともなっている。
[河野通博・編集部 2017年12月12日]