華北平原(読み)かほくへいげん(その他表記)Huá běi píng yuán

改訂新版 世界大百科事典 「華北平原」の意味・わかりやすい解説

華北平原 (かほくへいげん)
Huá běi píng yuán

中国の華北地区にある中国第2の広大な沖積平野で,海河,黄河淮河(わいが)の流域に属するので黄淮海平原とも呼ばれる。西は太行山脈と伏牛山脈,北は燕山山脈,南西大別山脈と桐柏山脈によって限られ,南東部は淮河をへだてて江淮平原と接する。大部分は標高50m以下で,面積は約31万km2。東は黄海渤海に面し,その間に山東丘陵が横たわる。華北平原形成の主体となったのは黄土高原から大量の黄土を流送する黄河で,大量の次生黄土の堆積によって,もと島であった山東丘陵との間の海面を陸化した。海河水系の諸支流も太行山脈山麓部に一連の扇状地を形成し,これらが連続して現在の平原が形成されたわけだが,黄河はみずからの流送する大量の土砂によって天井川化し,しばしば大幅に流路を変えた。現河道は19世紀中ごろ以降のものだが,その後の河床上昇により黄河の現河道を境に,北は海河水系,南は淮河水系の流域となっており,両水系の支流には黄河の旧河道を流れるものが多い。平原上は数千年前すでに黄河文明の中心であったが,今も小麦と綿の大産地であるほか,ラッカセイ,ゴマ,タバコの産地としても知られ,北京,天津,鄭州など,大工業都市も発達している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「華北平原」の意味・わかりやすい解説

華北平原
かほくへいげん / ホワペイピンユワン

中国、華北地区東半の大部分を占める大平原。黄淮海(こうわいかい/ホワンホワイハイ)平原ともいう。黄河、淮河(わいが)、海河の沖積作用によって形成された中国第二の大平野で、面積約31万平方キロメートル。地勢はきわめて低平で、大部分は標高50メートル以下である。西の太行(たいこう)山脈との境に大規模な扇状地が発達するほかは、勾配(こうばい)のきわめて緩やかな低地をなし、渤海(ぼっかい)沿岸は海進・海退を繰り返した。黄土高原からの莫大(ばくだい)な量の土砂の流入により陸化したが、現在もなお沈降が続いている。大部分は黄河の流し出した土砂で埋積されたが、黄河自体の天井川化により、黄河河床を分水界として北は海河、南は淮河の流域となっており、黄河はいまも河口に巨大なデルタを形成中である。平原上は中国最大のワタ作地で、また地下の厚い堆積(たいせき)層の下部に大量の石油資源の埋蔵がみられ、勝利、大港、華北(任邱(じんきゅう))、中原(ちゅうげん)などの油田が開発されている。

[河野通博]

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百科事典マイペディア 「華北平原」の意味・わかりやすい解説

華北平原【かほくへいげん】

中国北部,黄河下流域の平原。西は太行山脈から黄海,渤海まで,北は燕山山脈から大別山脈までの範囲を含む約31万km2。中国第2の大平原。黄河が形成した大扇状地および沖積平野で,黄土高原から運ばれた黄土が堆積されたものである。河北,山東の全省,江蘇・安徽両省の北部,河南省の西部に及ぶ。中国文化の母体となった地で,古来中原と呼ばれ政治権力の争奪がここで行われた。
→関連項目滄州

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「華北平原」の意味・わかりやすい解説

華北平原
かほくへいげん

「ホワペイ(華北)平原」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の華北平原の言及

【黄河】より

…崑崙山脈の一脈である青海省中部の巴顔喀拉山脈の雅拉達沢山の東麓約30kmにある約古宗列(青稞(大麦の一種)を炒る鍋の意)盆地の南西隅が黄河の発源地で,源流はチベット族により瑪曲(孔雀河の意味)と呼ばれる。
[河道の変遷と黄河文明]
 現在黄淮海(こうわいかい)平原とも呼ばれる華北平原は,その別名のように黄河,淮河,海河の3水系の運搬する土砂の堆積によって形成されたものであるが,その堆積作用においてずば抜けた主役を演じたのは黄河であった。皮肉なことに,華北平原において淮河と海河とは現在多数の支流が本流に流入し,その流域面積も非常に広いが,黄河は華北平原の最西端部で洛河と沁水が流入するものの,それより下流には,一本も流入する支流がなく,黄河本流自体も鉄壁のような大堤防に両岸を固められ,その河床は淮河水系と海河水系との分水嶺ともいえる役割を演じているにすぎない。…

※「華北平原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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