トケイソウ科(APG分類:トケイソウ科)の多年生つる草。果実を食用とするため、和名をクダモノトケイソウという。ブラジル原産。葉は三叉(さんさ)状に分裂する掌状単葉で、横径12センチメートル。花は新生したつるの葉腋(ようえき)に単生し、早朝に開花、午後には閉じる。花形はトケイソウと同様で、花弁、萼片(がくへん)とも5枚で白色。基部が紫色の糸状の副花冠が多数ある。雄しべは5本、雌しべは1本で柱頭が三裂する。トケイソウの名は、この花形を時計の文字盤に見立てたもの。果実は球形または楕円(だえん)形で、長さ5~8センチメートル。熟すにつれて黒紫色となるが、別に黄色になるキイロクダモノトケイソウもある。中南米で栽培が多いが、沖縄でも栽培できる。近縁種に、品質のよいグラナディヤ、大果のオオミトケイソウ、高地にできるバナナパッションフルーツなどがある。
果皮はもろく、厚さ3ミリメートル、中に乳白色のパルプに包まれた多数の種子がある。パルプは多汁で甘・酸味が適和し、芳香があって美味である。果実は生食および加工用とする。生食ではパルプに包まれた種子もそのまま食べる。加工はジュース専用で、果皮付き搾汁(さくじゅう)と、種子とパルプを分離してパルプのみからの搾汁の2方法がある。前者は果皮の色やえぐ味がつく。後者は収量は少ないが黄色の特徴あるジュースが得られる。搾汁後は変質を防ぐため、すぐ冷蔵するか、高温殺菌(85℃で5分)または瞬間殺菌する。単独で飲用するかリンゴ果汁やオレンジピューレなどと適宜混ぜて利用する。なお生果汁100グラム中には糖質15.8グラム、カロチン1400マイクログラム、A効果780IUを含み、酸度は3.0前後である。
[飯塚宗夫 2020年6月23日]
トケイソウ科の巻きひげを有するつる性の多年草。単純な果形と対照的に,花弁,おしべ・めしべ,総状の副花冠の配列を,時計にみたてたり,キリスト受難の形にちなむ名の由来に,本種の特性をみる。クダモノトケイとも称する。葉は互生で3出の掌状であり,茎の各節に巻きひげと托葉がある。花は白色あるいは帯紫色で,径5~7cm。果実は径5cm内外の球もしくは卵形で,深紫色に熟する。約3mmの厚さの果皮の内側はトマトに類似し,濃黄色のゼリー状の果肉が小さな黒色種子をつつむ。ブラジルが原産地であり,現在は熱帯,亜熱帯の各地で栽培されている。日本では鹿児島県南部,沖縄県などにおいて経済栽培が試みられている。半割りしてスプーンで生食するほか,ジュース原料として重用される。ビタミンCが豊富である。そのほかに,キャンディ,砂糖漬,シャーベット,ジャム,ゼリーの材料およびカクテルの香りにも用いる。
トケイソウ属Passifloraは400種以上が知られ,そのうち30種以上の果実が食べられている。栽培されるものにはパッションフルーツのほかに,オオミノトケイソウP.quadrangularis L.,ミズレモンP.laurifolia L.など数種がある。いずれもパッションフルーツほど耐寒性はない。
→トケイソウ
執筆者:岸本 修
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… トケイソウ属Passiflora(英名passionflower)は南アメリカを中心に400種以上が知られ,種子をつつむ種衣がゼリー状で,適度な酸甘味と芳香のあるものが多い。果物用に栽培されているのは,有名なクダモノトケイ(パッションフルーツ)(イラスト)のほかにも数種あり,また野生種でも食用にされる種は多い。 観賞用として作られるものにはほかにベニバナトケイソウP.coccinea Aubl.,ムラサキフイリバトケイソウP.trifasciata Lem.などがある。…
※「パッションフルーツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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