日本大百科全書(ニッポニカ) 「パティニール」の意味・わかりやすい解説
パティニール
ぱてぃにーる
Joachim Patenir (Patinir)
(1485ころ―1524)
フランドルの画家。初期の伝記的事実は明確ではないが、ディナンないしはその近郊で生まれ、1515年以降アントワープで制作し、1524年10月5日以前に同地で死去したと推定されている。デューラーは1521年に彼をアントワープに訪ねている。彼はフランドル絵画における初めての風景画のスペシャリストとして知られ、空想的な岩や森、街や川に、聖書の人物を点景とした作品には、理想主義的な広がりが感じられる。また、マセイスその他の画家たちの作品に風景を描いたともいわれている。代表作に『キリスト洗礼』(ウィーン美術史博物館)、『逃亡の旅の憩い』(ベルリン絵画館)、『カローンの渡し舟』(マドリード、プラド美術館)などがある。
[野村太郎]