日本大百科全書(ニッポニカ) 「マセイス」の意味・わかりやすい解説
マセイス
ませいす
Quentin (Quinten) Massys (Matsys, Metsys)
(1465/66―1530)
フランドルの画家。マサイス、マツェイス、メツェイスともいう。ルーフェンで生まれ、アンベルスで没した。後期ゴシックとイタリア・ルネサンスの過渡期に位置する画家で、北欧と南欧の様式を融合に導いた点でルーベンスを先取りする立場にある。初期の作品が失われているので画家としての系譜には不明な点が多いが、故郷で活躍した画家ボウツの絵とは多くの親近関係が認められる。1491年以降アンベルスに定住し、エラスムスやモアらの人文主義者と親交を結ぶ。またイタリアに旅行して、明快な色彩とコンポジションによる新しい立体感を獲得した。1515~24年にはパティニールと共作を行った(『聖アントニウスの誘惑』マドリード、個人蔵)。代表作にはアンベルス大聖堂のための祭壇画『キリスト埋葬』(アンベルス王立美術館)、『聖母子像』(ベルリン絵画館)、『両替商とその妻』(ルーブル美術館)がある。
[野村太郎]