日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラド美術館」の意味・わかりやすい解説
プラド美術館
ぷらどびじゅつかん
Museo del Prado
スペインの首都マドリードにある世界最大級の国立絵画美術館。スペイン王家によって収集された作品の保存と公開とを目的に、フェルナンド7世の命により、1819年王立美術館として発足。1868年の革命後に国有化され、名称も現在のものに改められた。これは、かつてこの地がサン・ヘロニモのプラド(牧場)であったことに由来する。新古典主義の代表作とされる建物は、巨匠ホアン・デ・ビリャヌエーバの設計になる。
1万7000点を超える収蔵品のうち絵画は約7600点で、その半分以上をスペイン絵画が占める。いずれも首席宮廷画家として活躍したベラスケスの『ブレダの開城』『マルガリータ王女』、ゴヤの2点の『マハ』をはじめとし、ギリシア出身のエル・グレコ、スペイン絵画の黄金時代を支えたリベラ、スルバラン、ムリーリョなどスペイン画家の作品収蔵にかけて他の追随を許さないことはいうまでもない。だが、この美術館のもう一つの特徴は、スペイン王家の趣味と、その勢力が及んだことを反映して、多数のフランドル、イタリア絵画の名品を所蔵することにある。前者にはロヒール・ファン・デル・ワイデンの最高傑作とされる『十字架降下』、ボスの『快楽の園』、85点ものルーベンスなどが含まれる。また、後者のベネチア派のコレクションは世界屈指といわれ、ティツィアーノには『ダナエ』など36点が、ティントレットには『赤子モーゼの発見』など25点が収蔵される。
[湊 典子]
『坂崎乙郎著『プラド美術館――絵は語る』(1980・河出書房新社)』▽『ホセ・ロヘリオ・ブエンディーア他解説、大高保二郎他訳『プラド美術館』(1997・岩波書店)』