ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
パリ・オリンピック競技大会
パリ・オリンピックきょうぎたいかい
参加選手は 206の国・地域および難民選手団 EORの約 1万500人。2022年2月にウクライナに軍事侵攻したロシアと同盟国のベラルーシは国としての参加が認められず,審査のうえ「中立な立場の個人資格の選手」AINとして,一部の選手に参加資格が与えられた。
新競技にブレイキンが採用され,またジェンダー平等の観点から過去最多の 20種目となった男女混合種目を含む,32競技 329種目が実施された。国別金メダル獲得数の首位は 40個を獲得したアメリカ合衆国と中国で,アメリカはメダル総数で 126個と首位に立ち,中国は 91個で 2位につけた。金メダル数 3位は日本の 20個で,海外で開かれる大会で過去最多を記録した。また,メダル総数では 3位のイギリス,4位の開催国フランス,5位のオーストラリアに続き,6位の 45個だった。個人では競泳男子のレオン・マルシャン(フランス)が 200m平泳ぎ,200mバタフライ,200mと 400mの個人メドレーをいずれもオリンピック新記録で制して四冠を達成,地元を盛り上げた。フランス勢ではこのほか,柔道男子 100kg級でテディ・リネールが自身 3度目の個人金メダルに輝き,混合団体とあわせて金メダル 2個を獲得した。男子棒高跳びのアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)は世界新記録となる 6m25(20日後に 6m26に更新)で 2連覇を果たし,アーチェリー男子のキム・ウジン(金優鎮)は個人,男子団体,混合団体の 3種目で金メダルに輝き,自身の通算金メダル獲得数を 5個とした。ボクシング女子 75kg級のシンディ・ンガンバは難民選手団初の金メダリストとなった。
日本は海外大会としては最多の 409人を派遣した。20個の金メダルのうち,レスリングが男女 4個ずつの計 8個を占めた。一方,柔道は男子 66kg級の阿部一二三,81kg級の永瀬貴規が 2連覇を果たしたものの,前東京大会の金 9個から 3個と数を減らした。フェンシング勢は躍進し,男子エペ個人の加納虹輝と男子フルーレ団体の金メダルのほか,団体で銀メダル 1個,銅メダル 2個を奪った。スケートボード男子ストリートは堀米雄斗が大技を決めて大逆転を演じ,2連覇の快挙。女子もストリートで吉沢恋(よしざわここ)が頂点に立ったほか,ストリートとパークでそれぞれ銀メダリストが誕生した。体操男子は新鋭の岡慎之助の奮闘もあって 2大会ぶりに団体総合で勝った。岡は個人総合,種目別鉄棒も制覇し,種目別平行棒でも銅メダル。陸上競技では女子やり投げの前年世界選手権覇者,北口榛花が期待にこたえてフィールド種目で日本女子初となる金メダルを手にした。新競技のブレイキンでは,女子で「AMI(アミ)」こと湯浅亜実が初代女王となった。水泳男子10m高飛び込みの玉井陸斗が飛び込み勢として日本人初の,近代五種男子の佐藤大宗が同競技日本人初のメダリストとなり,また馬術総合馬術団体の日本チームは西竹一以来 92年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得した。
有観客での開催は選手への声援や拍手で大いに盛り上がり,開催期間中は終始明るい雰囲気に包まれ,競技会場は連日満員となった。選手団の入場行進をセーヌ川で行なった開会式,一般市民がメダリストと交流できるエッフェル塔近くのチャンピオンズパークの設置なども評判を呼んだ。「広く開かれた大会」Games Wide Openをスローガンに掲げ,国際オリンピック委員会 IOCが SNS(ソーシャルネットワーク・サービス)を通じての情報発信に力を注ぐなか,ボクシング女子 66kgに優勝したアルジェリアの選手の性別をめぐって誹謗中傷の投稿が多数飛び交い,問題となった。
パリ・オリンピック競技大会
パリ・オリンピックきょうぎたいかい
パリ・オリンピック競技大会
パリ・オリンピックきょうぎたいかい
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