フランスの教育学者,国際オリンピック委員会(IOC)の創立者。男爵家の三男としてパリで生まれ,父の希望で陸軍士官学校を卒業したが,軍人を嫌って教育学者を志した。1884年イギリスのパブリック・スクールを視察し,宗教とスポーツを重視する教育方針に強い感銘を受ける。さらに87年にはアメリカの大学を視察,学生スポーツの盛況を知り,スポーツの教育的価値を強く認識し,普仏戦争に敗れた後の祖国の再建を青少年へのスポーツの普及により果たそうと考えた。さらに,古代史に関心をもつ彼は,ドイツの考古学者E.クルティウスのオリュンピア遺跡発掘に刺激され,スポーツの国際交流による世界平和の実現に熱意を抱くようになった。92年フランス・スポーツ連盟の総会で,初めてオリンピック復活を提唱。欧米各国のスポーツ指導者に呼びかけて,94年パリ大学(ソルボンヌ)で国際スポーツ会議を開催し,6月23日全会一致でオリンピック復興を決議,直ちにIOCを創立した(ギリシアのD. ビケラスが初代会長)。96年アテネにおける第1回オリンピック大会が成功し,閉会後クーベルタンがIOCの第2代会長に就任,1925年まで在任して,オリンピック運動を軌道に乗せた。墓はローザンヌにあるが,遺言により心臓はオリュンピアの遺跡に埋葬された。
→オリンピック
執筆者:川本 信正
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近代オリンピック競技の創始者。フランス人で男爵。先祖はルイ6世の流れをくみ、イタリア貴族やウィリアム征服王の廷臣もいる。父の希望で軍人になるためサン・シールの幼年学校に入学したが、ドイツに対する報復を主目的とする教育に反発し、政治家を志した。たまたま『トム・ブラウンのラグビー在校日記』を読み、イギリスのパブリック・スクールの教育の中心にスポーツがあることに共鳴し、ラグビー校校長でもあったT・アーノルドの思想を研究した。1886年、彼は政府の補助を受けたアメリカ視察の報告を兼ねて、文部大臣に教育におけるスポーツの重要性を建議したが、具体的な反応はなく、反対者をつくりだしたにすぎなかった。
1887年ころ、当時のオリンピア発掘などに触発されてオリンピック復活を着想し、92年から運動を始め、94年これに成功して国際オリンピック委員会(IOC)を創設した。1896年から1925年まで第2代IOC会長、以後死去するまで名誉会長として近代オリンピック運動を指導・助言した。この間の経緯は、彼の著である『オリンピックの回想』に詳しい。第一次世界大戦中スイスのローザンヌに移り、そこで死去した。
[鈴木良徳]
『K・ディーム編、大島鎌吉訳『オリンピックの回想』(1962・ベースボール・マガジン社)』
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1863~1937
フランスの教育家。近代オリンピック競技の創始者として知られる。
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…冬季大会の回数はオリンピック大会とは別に数え,中止された大会は回数に加えない。
〔近代オリンピック〕
【オリンピックの復興とIOC】
フランスの教育学者クーベルタン男爵の〈スポーツによる青少年教育の振興と世界平和実現のために,古代オリンピックを復興しよう〉という呼びかけに応じ,1894年6月23日,パリ大学(ソルボンヌ)講堂で開催されたフランス・スポーツ連盟主催の国際スポーツ会議で,オリンピックの復興が全会一致で決定し,13ヵ国から選ばれた15人をメンバーとするIOCが創立され,クーベルタンの推薦で,ギリシアのビケラスDemétrios Vikélasが初代会長に就任,近代オリンピアードの第1年を96年とし,第1回大会を古代オリンピックがオリュンピア(ギリシア)で行われていたことを記念して,ギリシアの首都アテネで開催することを決めた。第1回大会終了後,クーベルタンが第2代会長に就任,多くの困難と闘いながら1925年まで在任し,オリンピック運動を軌道に乗せた。…
…国際オリンピック委員会International Olympic Committee(略称IOC)と国内オリンピック委員会National Olympic Committee(略称NOC)がある。 IOCは,フランスの教育学者クーベルタンの提唱で,1894年6月23日パリで創立された。IOCの目的は,(1)スポーツの基調をなす肉体的・精神的資質の発達を促進する,(2)スポーツを通じて,青少年に相互のよりよき理解と友好の精神を教育し,それによって,よりよき,より平和な世界の建設に寄与する,(3)世界にオリンピック運動の原則を普及し,それによって国際親善を喚起する,(4)世界のアスリート(競技者)を,4年に1度の偉大なスポーツ祭典,オリンピック大会に参集させることにある。…
※「クーベルタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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