日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒゲダイ」の意味・わかりやすい解説
ヒゲダイ
ひげだい / 鬚鯛
long barbeled grunt
[学] Hapalogenys sennin
硬骨魚綱スズキ目イサキ科に属する海水魚。福島県以南の太平洋沿岸、山形県以南の日本海沿岸、奄美(あまみ)大島、小笠原(おがさわら)諸島沿岸、東シナ海に分布する。体は側扁(そくへん)し、体高は高い。吻(ふん)は長くてとがり、背縁は反っている。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)には鱗(うろこ)がない。両顎に絨毛(じゅうもう)状歯がある。下顎腹面に3対の小孔(こあな)と長いひげが密生している。ヒゲダイの名はこれに由来する。背びれ起部には前向きの棘(とげ)があり、中央部には深い欠刻(切れ込み)がある。尾びれ後縁は丸い。最大の全長は約45センチメートル。体は暗紫褐色で、2条の非常に不明瞭(ふめいりょう)な斜走黒帯がある。各ひれは黒く、とくに腹びれは真黒色。幼魚では体は黒褐色で、背びれと臀(しり)びれの軟条部と尾びれは透明。沿岸の水深25~50メートルの岩礁域や砂泥底域に生息し、魚礁や沈船にすみつくことが多い。釣り、底引網、定置網などで漁獲される。刺身、塩焼き、煮つけなどにして賞味される。2005年にH.senninの学名が与えられた。近縁種のヒゲソリダイとは主上顎骨の鱗の有無と下顎のひげの有無で明瞭に区別できる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]