改訂新版 世界大百科事典 「ヒトツバハギ」の意味・わかりやすい解説
ヒトツバハギ
Securinega suffruticosa (Pall.) Rehd.
平地~低山の陽地に生育するトウダイグサ科の落葉低木。本州中部の太平洋側~沖縄,台湾,朝鮮,中国,シベリア東部やヒマラヤに分布する。高さ2m内外。細い枝が長くしだれるようすが,一見ハギに似て,単葉であるところから〈一つ葉萩〉という。長さ3~5cmの楕円形の葉を互生する。雌雄異株。6月ごろ,淡黄色の小さな花(径3mm)が,雌株では5個内外,雄株では多数,葉腋(ようえき)に束生する。雌花,雄花はともに花弁がなく,5枚の萼片を有する。果実は扁平な球形の蒴果(さくか)で,熟すとはじけて6個の種子を散らす。葉や花に含まれるアルカロイドの一種セクリニンsecurinineには,神経系興奮作用があり,ポリオ後遺症の治療薬として用いられる。また,中国では茎皮より繊維をとり,朝鮮では葉を食用とする。
ヒトツバハギ属Securinegaは世界の暖温帯~亜熱帯に約10種あり,日本には本種のみが産する。属名は〈斧をはじく〉を意味し,材が堅いことによる。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報