ヒラタカメムシ(その他表記)flat bug

改訂新版 世界大百科事典 「ヒラタカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタカメムシ
flat bug

半翅目ヒラタカメムシ科Aradidaeの昆虫総称,またはこのうちの1種を指す。この科のカメムシは小型から中型で,体は赤褐色または黒色突起や瘤状隆起のあるものが多い。単眼を欠き,口吻(こうふん)は3節で短いが中の小針は非常に長い。サルノコシカケなどのキノコ類につくものや,枯木樹皮下や材の切口などに生活するものがいるがいずれも食菌性であろう。世界に1000種,日本では二十数種が記録されている。

 代表種ヒラタカメムシAradus conentaneus体長6mm内外。淡褐色で頭部は前方に突出し,先端は丸い。触角突起は鋭く前方に突出し,前胸背側縁は薄く灰白色で中央に4本の隆起条があり,後葉節はやや濃色。前翅の前縁部の基部は突出し淡色山地シラカバなどの幹や切口に生活する。北海道,本州,九州,サハリンシベリアに分布する。ノコギリヒラタカメムシA.orientalisは体長8mm内外。雄は黒色で腹部側縁が鋸歯状。日本各地にふつうで,カワラタケなどのキノコ上で生活する。ヒメヒラタカメムシAneurus macrotylusは体はきわめて扁平で赤褐色。口吻は非常に短い。日本全国に分布し,枯木の樹皮下に生活する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒラタカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタカメムシ
Aradidae; flat bug

半翅目異翅亜目ヒラタカメムシ科に属する昆虫の総称。きわめて扁平で幅広カメムシ。体長5~12mm。全体に暗褐色または茶褐色で樹皮の一部に見えるものが多く,一般に上から見ると長楕円形である。触角は4節で,各節の間はくびれている。頭頂は狭く突出し,触角突起がよく発達する。単眼はなく,口吻は3節。前胸背の肩が張出すことが多い。肢は全体に細い。腹部は扁平で幅広く,前翅下からはみ出して広がっている。朽ち木の樹皮下などによくみられ,日本には約 30種が知られる。ヒラタカメムシ Aradus consentaneusは体長 6mm内外,淡褐色の種で,表面がざらざらしている。この種は日本全土に分布し,シラカバの薪の切り口などによく集る。 (→異翅類 , 半翅類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタカメムシ
ひらたかめむし / 扁平亀虫
扁椿象
flatbug

昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目ヒラタカメムシ科Aradidaeの昆虫の総称、およびそのなかの1種。体はきわめて扁平(へんぺい)で、大きくても体長はせいぜい20ミリ。触角は四節からなり、各節間は強くくびれる。単眼を欠き、口吻(こうふん)は三節。脚(あし)の跗節(ふせつ)は二節。朽ち木の樹皮下やキノコ上に生活し、食菌性である。口吻の長さが頭部より長いものと、短いものに大きく分類される。はねは長短いろいろで、長いものでも大部分が膜質となるものがある。

 ヒラタカメムシAradus consentanusは体長約6ミリで、体全体が光沢のない淡褐色を帯びる。日本全土に分布し、おもに山地性。シラカバなどの朽ち木や薪(まき)にすむ。また、各地に普通のノコギリヒラタカメムシA. orientalisほかが知られる。

[林 正美]

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