サルノコシカケ(読み)さるのこしかけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルノコシカケ」の意味・わかりやすい解説

サルノコシカケ
さるのこしかけ / 猿の腰掛

担子菌類サルノコシカケ目サルノコシカケ科・マンネンタケ科・キコブタケ科の菌類のうち、とくに木質で多年生となるキノコを総称した一般名。中国では「猢猻眼(こそんがん)」と書き、本草(ほんぞう)書でも猢猻眼を用いる。立ち木または枯れ木に生え、棚形か馬蹄(ばてい)形に発達し、年々成長を続けて厚さと幅を増す。数十年を経過した巨大なものは径1メートル、厚さ数十センチメートルにも達する。キノコの下面には無数の微細な管孔(くだあな)が密に並び、その内面に胞子をつくる。管孔は1年ごとに新しく下側に形成されるため、キノコを縦断すると管孔部には多くの層が認められる。サルノコシカケは種類が多く、分類には顕微鏡的特徴も加えなければならないが、縦断面の組織(傘の肉)の色で大別すると次のように分けられる。

(1)傘の肉が白色ないし黄白色で、針葉樹に生えるツガサルノコシカケ、エブリコ、オオシロサルノコシカケ、広葉樹に生えるカシサルノコシカケ、ニレサルノコシカケ(いずれもサルノコシカケ科)。

(2)傘の肉が黄褐色で、針葉樹に生えるモミサルノコシカケ、マツノカタワタケ、エゾノコシカケ、広葉樹に生えるコブサルノコシカケ、メシマコブ、キコブタケ(いずれもキコブタケ科)。

(3)傘の肉がチョコレート色で、広葉樹に生えるコフキサルノコシカケ(マンネンタケ科)。

(4)傘の肉が紫黒色で、広葉樹に生えるクロサルノコシカケ(サルノコシカケ科)。

(5)傘の肉が桃色ないし紫褐色で、針葉樹に生えるバライロサルノコシカケ(サルノコシカケ科)。

 これらはいずれも普通にみられる木材腐朽菌で、立ち木に侵入すれば心材または辺材を腐らせ、風倒、風折れの原因となる。こうしたことによって森林は壊滅的被害を受けることがある。また庭木、公園木、街路樹なども、こうした木材腐朽菌によって風折れとなることがあるので警戒しなければならない。ただし、木材腐朽菌が直接に木を枯らすことは少なく、木が材質腐朽病をおこして折れやすくなり、それが枯死の原因となることが多い。なお、サルノコシカケ科のカワラタケには制癌(せいがん)成分が含まれるといわれる。

[今関六也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルノコシカケ」の意味・わかりやすい解説

サルノコシカケ(猿の腰掛)
サルノコシカケ
shelf fungi

担子菌類ヒダナシタケ目に属するキノコのうち,傘が木化して硬くなり,傘の柄が発達しないので樹木の幹に半円形のじょうぶな棚を吊ったようになるもの。最も大きくなるものにニレサルノコシカケ Rigidoporus ulmarius,ツガサルノコシカケ Fomitopsis pinicolaなどがある。前者には径 1mに達するものの記録があり,後者は 50cm以上にもなる。近年,サルノコシカケ類に抗癌性を認める研究報告もある。

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