ビキニ水爆実験

共同通信ニュース用語解説 「ビキニ水爆実験」の解説

ビキニ水爆実験

1954年3~5月、米国太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁などで実施した計6回の水爆実験。3月1日の最大の水爆実験「ブラボー」で砕かれたサンゴ礁放射性降下物「死の灰」となり広範囲に降り注いだ。「第五福竜丸」の乗組員23人が被ばくし、無線長久保山愛吉くぼやま・あいきちさん=当時(40)=が半年後に死亡した。周辺海域では第五福竜丸のほか、少なくとも延べ約千隻の日本漁船がいたとされる。国は2014年、延べ556隻の検査結果を開示し、うち延べ12隻の被ばくを認めたが健康被害が生じるレベルは下回っているとした。

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改訂新版 世界大百科事典 「ビキニ水爆実験」の意味・わかりやすい解説

ビキニ水爆実験 (ビキニすいばくじっけん)

アメリカミクロネシアのマーシャル諸島ビキニ島で行った水爆実験。アメリカはソ連の原爆保有で原爆独占が崩れると1952年1月水爆開発に着手し,54年3月1日,一連の水爆実験の第一弾を爆発させた。その威力TNT火薬にして約15メガトン,アメリカが予想した2倍以上の爆発力であったといわれ,放射性物質を含む灰はアメリカが危険区域として指定した地域を越えビキニ島から風下側のほぼ楕円形の地域に降下し,その面積は約7000平方マイル(約1万8000km2)に及んだ。実験に先だち島民はアメリカ軍によりクワジャリン島に移されたが,危険区域と見なさず住民を移動させなかったロンゲラプ,エニウェトク島等でも被害をうけた。ビキニ島東方75カイリ(約140km)の危険区域外で操業中のマグロ延縄(はえなわ)漁船第五福竜丸は約3時間後から,降灰中を知らずに揚縄作業に従事,全員が致死量に近い放射線をうけ,14日焼津港に帰港した。マグロは放射能汚染のため廃棄処分され,船員23人は入院,検査・治療をうけたが,9月23日無線長久保山愛吉は死亡した(第五福竜丸事件)。その後の日本側の分析により降灰からウラン237が検出され,水爆によることが明らかにされた。またアメリカ大使館の妨害をけって派遣された水産庁による水産講習所の練習船俊鶻丸のビキニ周辺海域の調査でも異常に高い放射能が検出され,水爆実験との関係を否定しつづけたアメリカ原子力委員会も翌春,全面的に承認した。このとき死の灰を浴びた日本の船舶は政府調査で683隻に上る。

 この実験はそれまで原水爆実験が人類に大きな影響を与えることに無知であった全世界に衝撃を与え,日本では5月20日,東京都杉並区から水爆禁止署名運動が始まり,8月8日原水爆禁止署名運動全国協議会が結成され,同年中に署名数は2000万を超え,国際的な原水爆禁止運動の発端となった。その後,第五福竜丸は東京水産大学に移され,1956年同大学練習船〈はやぶさ丸〉となったが,67年3月廃船処分された。翌年から保存運動が起こり,75年2月,東京都に移管され,夢の島に展示館も設置された。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ビキニ水爆実験」の解説

ビキニ水爆実験
ビキニすいばくじっけん

南太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で,アメリカが1954~58年に行った3回の水爆実験。初回の54年3月1日の実験の際には,住民が被災するとともに,第5福竜丸事件がおきて,日本にも衝撃を与えた。このアメリカの水爆実験を契機として,それまでは冷戦の国際政治下で政治的に利用されてきた原水爆禁止運動が,イデオロギーの相違をこえて,世界的規模で拡大した。

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世界大百科事典(旧版)内のビキニ水爆実験の言及

【海洋汚染】より

…海洋を汚染するおもなものは,陸地からの汚染物の流入,大気浮遊塵の落下,タンカーその他の船からの廃棄物の放出などであるが,最近は,火力発電所や原子力発電所の温排水による沿岸海域の熱汚染,陸上原子力施設,原子力船からの放射性廃棄物の放出による海洋の放射能汚染などが憂慮されている。大気中に放出された汚染物質も,降水によって直接海面に落下するほか,陸上の河川を経て海洋に流れ込むので,終局的には海洋が多くの廃棄物の集積場ともなりかねない。…

【核実験】より

…また地下爆発では大規模な核実験は行えないともいわれていたが,実験孔を掘る技術の進歩などによって,アメリカはアムチトカ島で69年10月に1.5Mt,71年11月には5Mtの地下核実験を行った。 1954年3月1日,アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験では,爆発地点から150kmも離れたところで操業していた日本のマグロ延縄(はえなわ)漁船〈第五福竜丸〉が大量の放射性降下物をあびて,乗組員23人全員がひどい放射線障害を起こし,半年後に無線長の久保山愛吉が死亡するという事件が起こった(ビキニ水爆実験)。さらに続けられた核実験によって,多数の漁船や漁獲物が放射能に汚染されていることが明らかになった。…

【水素爆弾】より

…1954年3月より5月にかけてアメリカが太平洋のビキニ環礁で水爆実験を行ったさい,日本のマグロ漁船第五福竜丸は実験の立入り危険区域の外で操業していたにもかかわらず,多量の放射能降灰を浴びた。乗組員全員が大きな放射能障害を受け,久保山愛吉無線長はそれがもとで約半年後に死亡した(ビキニ水爆実験)。またマグロをはじめとする魚介類に著しい放射能汚染が見られた。…

※「ビキニ水爆実験」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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