日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビダール苔癬」の意味・わかりやすい解説
ビダール苔癬
びだーるたいせん
湿疹(しっしん)性疾患の一つで、かつては慢性単純性苔癬、あるいは限局性神経皮膚炎とよばれた病変と同義である。初めて記載したパリの皮膚科医ビダールEmilie Vidal(1825―93)にちなんでビダール苔癬とよばれる。好発部位は項部(うなじ、首の後方)や側頸部(そくけいぶ)などで、まずかゆくなってかいているうちに、ぶつぶつ(丘疹(きゅうしん))が密集してきて皮丘と皮溝が著明となり、皮丘は乾燥して肥厚隆起し、皮溝は深く大きくなって苔癬化局面を形成する。この局面は比較的境界が明確であるが、ときに不明確な場合もあり、円形または不整形で、大きさは母指頭大から鶏卵大程度である。正常皮膚色のこともあるが、普通は淡紅色または灰白色で、表面にふけ状の鱗屑(りんせつ)がわずかについている。周囲には扁平(へんぺい)丘疹が散在することがある。病巣にはかきむしったために血液の乾いた血痂(けっか)をかぶっていることはあるが、湿潤するようなことはない。
治療としては、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤を含有した軟膏(なんこう)またはクリームを外用する。瘙痒が強い時にはかきむしらないようにするため、経口的に抗ヒスタミン剤を併用する。
[伊崎正勝・伊崎誠一]