改訂新版 世界大百科事典 「苔癬」の意味・わかりやすい解説
苔癬 (たいせん)
lichen
皮膚病変の名称の一つで,ほぼ均一の大きさを示す充実性丘疹が密生ないし散生し,比較的長くその状態を持続するものをいう。おもな疾患に次のものがある。(1)ウィダール苔癬 おもに項・頸部に,初め強いかゆみがあり,引っかいているうちにほぼ同大の紅色丘疹が出現,しだいに集まって平たんな局面を形成する。中年以降,とくに女性に多い。(2)毛孔性苔癬 おもに上腕・大腿伸側に,アワ粒大の毛孔性角化丘疹が播種状ないし密生して出現する。自覚症状はない。遺伝性の疾患で,思春期,ことに女性に顕著である。(3)扁平紅色苔癬 帽針頭大~エンドウ大の,淡紅色~紫紅色,扁平な丘疹が,おもに四肢関節曲面,外陰部に出現し,ときに帯状に配列する。しばしば粘膜を侵す。原因不明。薬剤との関係が推測されている。(4)光沢苔癬 帽針頭大,ほぼ大きさ均一な黄白色小丘疹が,体幹,四肢,陰部に密生し,表面は扁平で光沢がある。自覚症状はない。若い男子に多い。(5)尖圭紅色苔癬 毛孔性丘疹が,体幹,四肢に対側性に出現,密生,融合して,紅色角化性の局面を形成する。手掌,足蹠の角化を伴う。治療はそれぞれで異なるが,外用薬の塗布や密封療法などを行う。
執筆者:石橋 康正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報