改訂新版 世界大百科事典 「ファゲ」の意味・わかりやすい解説
ファゲ
Émile Faguet
生没年:1847-1916
フランスの批評家。パリ大学の教授を務める一方,各種の新聞に文芸批評や劇評を書いた。それらを収めた《文学語録》5巻(1902-10),《演劇語録》5巻(1903-10)のほか,数多い著作の中でも,世紀ごとにまとめられた16世紀から19世紀に至る《文学研究》4巻(1885-94)や,《19世紀の政治思想家とモラリスト》3巻(1891-1900)などが代表的である。彼の特色は,理論的体系を排し,自由で明晰な精神による深い洞察によって,作品から一つの精神の〈顕著な特徴〉を浮かび上がらせる点にあったが,個人の芸術的資質よりもその思想に引かれた彼の批評からは,芸術の教化的価値を強調するモラリストの風貌がうかがわれる。
執筆者:細田 直孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報