十戒(読み)ジッカイ

デジタル大辞泉 「十戒」の意味・読み・例文・類語

じっ‐かい【十戒/十×誡】

(十戒)仏語。
沙弥しゃみ沙弥尼の守らなければならない10の戒め。不殺生・不偸盗ふちゅうとう・不淫・不妄語・不飲酒ふおんじゅ不塗飾香鬘ふとしょくこうまん・不歌舞観聴・不坐高広大牀ふざこうこうだいしょう不非時食ふひじじき・不蓄金銀宝。沙弥十戒。
㋑「十善戒」の略。
Decalogue; Ten Commandments旧約聖書出エジプト記にある、モーセシナイ山ヤーウェ神から与えられた10か条の啓示。「わたしのほかに、なにものも神としてはならない」と唯一神への信仰を求める第一戒に始まり、偶像礼拝の禁、神の名の尊厳、安息日の厳守、父母を敬うこと、以下、殺人・姦淫かんいん・盗み・偽証・貪欲などを戒める。モーセの十戒。

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精選版 日本国語大辞典 「十戒」の意味・読み・例文・類語

じっ‐かい【十戒・十誡】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 十戒 ) 仏語。仏道修行上、守らなければならない一〇の規律。
    1. 沙彌、沙彌尼の受持する十戒。不殺生、不偸盗(ふちゅうとう)、不淫、不妄語、不飲酒(ふおんじゅ)、不塗飾香鬘、不歌舞観聴、不坐高広牀、不非時食、不蓄金銀宝の一〇。普通、沙彌十戒という。沙彌戒
      1. [初出の実例]「槇尾(まきのを)山寺に頭を剃て十戒を授く」(出典:今昔物語集(1120頃)一一)
    2. じゅうぜんかい(十善戒)」の略。
      1. [初出の実例]「なかにも、わかうより、十戒のなかに、妄語をばたもちて侍る身なればこそ、かくいのちをばたもたれて候へ」(出典:大鏡(12C前)六)
    3. ( 「じゅうじゅうきんかい(十重禁戒)」の略 ) =じゅうじゅうきん(十重禁)
  3. [ 二 ] ( [英語] Decalogue, Ten Commandments の訳語 ) キリスト教で、旧約聖書に記された一〇か条の啓示。神がシナイ山の頂上でモーゼに与えたという。「我の他何ものをも神とすべからず」、「偶像を造りてこれを拝すべからず」、「安息日を憶えてこれを聖潔(きよく)すべし」のほか、殺人、姦淫、盗み、偽証、貪欲などを戒めている。モーゼの十戒。
    1. [初出の実例]「ヱホバその契約の詞なる十誡(ジッカイ)をかの板の上に書したまへり」(出典:旧約全書(1888)出埃及記)

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改訂新版 世界大百科事典 「十戒」の意味・わかりやすい解説

十戒 (じっかい)
The Ten Commandments

アメリカ映画。1923年製作。日本公開時のタイトルは《十誡》。セシル・B.デミル監督の最初のスペクタクル史劇。1920年代のハリウッドで社会の批判にこたえる自主規制が叫ばれたとき,それまで《男性と女性》(1919),《何故妻を換へる?》(1920),《禁男の果実》(1921)等々,その批判の対象である性風俗の乱れを描いた作品を次々と送り出していた当人のデミルは,それらの風俗劇と縁を切り,聖書を題材とした大作をつくることで批判の矛先をかわした。旧約聖書の《出エジプト記》とメロドラマ的な現代編からなる二部構成の《十誡》は,薄物をまとった官能的な女性が登場する乱交場面などの〈罪〉を描いたシーンや,そこだけテクニカラーで撮影された戦車の突進,紅海が二つに割れるシーンなどの娯楽性によって記録的な成功をおさめた。以後,デミルの名は聖書を題材にしたスペクタクル大作と切っても切れないものとなる(聖書の数ページがあれば映画はいつでもつくれると彼は豪語した)。1956年にチャールトン・ヘストン主演でデミル自身により上映時間4時間のカラー超大作としてリメークされたが,これがデミルの最後の作品ともなった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十戒」の意味・わかりやすい解説

十戒
じっかい
Decalogue

神がシナイ山上でモーセを通してイスラエルの民に授けたとされる10か条の戒め。2枚の石板に刻まれていたといわれ、「モーセの十戒」ともよばれる。ユダヤ教、キリスト教の宗教・倫理の根本原理を簡潔に示したものである。『旧約聖書』の「出(しゅつ)エジプト記」20章と「申命記(しんめいき)」5章にほぼ同じ形で出ている。前文に「わたしはあなたの神、主(しゅ)であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出した者である」とあり、この戒めが、神に選ばれ、すでに救われた共同体への指針であることが明示されている。まず「あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない」として、唯一神への信仰を求める第一戒、偶像礼拝を禁ずる第二戒、神名をみだりに唱えることを禁ずる第三戒などは、多神教的な古代諸宗教中比類のないものである。ついで、安息日の厳守、父母を敬うこと、殺人、姦淫(かんいん)、盗み、偽証、貪欲(どんよく)の禁止が、いずれも時と場合を問わず、命ぜられる断言法の形で示されている。

[清重尚弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十戒」の意味・わかりやすい解説

十戒
じっかい
Decalogue; Ten Commandments

モーセの十戒。ヘブライ語原義は「10の言葉」‘ aśereth hadebarîm (出エジプト記 34・38,申命記4・13) 。シナイ山において神はモーセにみずからがイスラエルの民の神ヤハウェであることを告げ,神を愛しその戒めを守る者には千代に及ぶまで恩恵を施すと約して,神に対する愛について (1) ヤハウェのほかなにものをも神としないこと,(2) 主なる神の名をみだりに呼ばないこと,(3) 安息日を記憶してこれを聖とすること,また他人に対する愛について,(4) 父母を敬うこと,(5) 殺さないこと,(6) 姦淫しないこと,(7) 盗まないこと,(8) 偽証しないこと,(9) 他人の妻を恋慕しないこと,(10) 他人の所有物を貪らないことの 10の戒めを示された (出エジプト記 20章) 。旧約聖書において神とイスラエルの民との契約の言葉として示された十戒は新約聖書においてもイエスにより成就さるべきものとして継受されており (マタイ福音書5章) ,またそのすべてが人間性に基づき神より各人の心に刻まれたものとして確信されている (ローマ書2・15) 。ただし現在聖書中に示される十戒には後世の加筆があり,原型の形式と歴史的起源が大きな問題となっている。

十戒[仏教]
じっかい[ぶっきょう]

仏教で守らなければならない 10種の戒め。必ずしも一定しないが,普通には,沙弥沙弥尼 (いずれも,ともに出家者ではあるが,年少のためにまだ真の出家者と認められない男子および女子) の十戒をさす。 (1) 生き物を殺さないこと,(2) 盗みをしないこと,(3) 性交を絶つこと,(4) 嘘をつかないこと,(5) 酒を飲まないこと,(6) 身を飾らないこと,(7) 歌舞を見聞きしないこと,(8) 高く広い寝台に寝ないこと,(9) 午後に食事をしないこと,(10) 金銀を私有しないこと。大乗仏教で重視される 10種の戒めは,十重禁戒と呼ばれ,次のことを禁じる。 (1) 生き物を殺す,(2) 盗む,(3) 姦淫する,(4) 嘘をつく,(5) 酒を売る,(6) 在家・出家の菩薩および比丘・比丘尼の罪過を説く,(7) 自己をたたえ他をそしる,(8) 施しをするのを惜しむ,(9) 怒って他人の謝罪を許さない,(10) 仏・法・僧の三宝をそしる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「十戒」の解説

十戒
じっかい

モーセがシナイ山で神から受けた律法
『旧約聖書』の「出エジプト記」20章に記されている。「あなたはわたしのほかになにものをも神としてはならない」に始まり,「あなたは殺してはならない」「あなたは姦淫 (かんいん) してはならない」「あなたは盗んではならない」など,10項目の契約からなり,ユダヤ教・キリスト教の倫理の根本を簡潔に示している。

十戒
じゅっかい

じっかい

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デジタル大辞泉プラス 「十戒」の解説

十戒

1956年製作のアメリカ映画。原題《The Ten Commandments》。旧約聖書「出エジプト」「モーゼの十戒」に基づく歴史スペクタクル映画。監督:セシル・B・デミル、出演:チャールトン・ヘストン、アン・バクスター、ユル・ブリンナーほか。第29回米国アカデミー賞作品賞ノミネート。同特殊効果賞受賞。

十戒(1984)

日本のポピュラー音楽。歌は女性歌手、中森明菜。1984年発売。作詞:売野雅勇、作曲:高中正義。

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世界大百科事典(旧版)内の十戒の言及

【十誡】より

…〈十戒〉とも書く。聖書,キリスト教世界の倫理の根幹を成す基本的誡命であり旧約聖書《出エジプト記》20章2~17節(ほぼ同じ並行記事は《申命記》5:6~21)にあり,特に〈モーセの十誡〉と呼ばれる。…

【受戒】より

…仏弟子となるためには必ず道徳の基準となる戒を受けなければならないが,戒には出家と在家,その他の相違によっていくつかの種類があり,それに応じて受戒の作法にも相違がある。在家の戒としては五戒や八斎戒(はつさいかい)があり,また出家の戒としては比丘や比丘尼の具足戒,沙弥(しやみ)や沙弥尼の十戒,式叉摩尼(しきしやまに)の六戒(これは十戒に含まれる)などがあるが,八斎戒が1日(1昼夜),式叉摩尼の六戒が2年に限られているのに対し,他は捨戒しない限り,一生涯保つべきものである。受戒作法のうち最も複雑なのはもちろん出家の具足戒で,これには戒和上(かいわじよう)と羯磨阿闍梨(こんまあじやり)と教授阿闍梨,それに7人の証人(〈三師七証〉。…

※「十戒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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