改訂新版 世界大百科事典 「フィラレーテ」の意味・わかりやすい解説
フィラレーテ
Filarete
生没年:1400ころ-69ころ
初期ルネサンスのイタリアの彫刻家,建築家。本名アントニオ・ディ・ピエトロ・アベルリーノAntonio di Pietro Aver(u)lino。自称のフィラレーテは美徳と愛を意味するギリシア語からの造語。1433年生都フィレンツェからローマに出てサン・ピエトロ大聖堂正面銅扉を制作,45年に完成させた。47年聖遺物どろぼうの嫌疑をかけられてローマから追放され,北イタリアを放浪したのち建築家としてミラノ公に仕えた。スフォルツァ城の塔門,大病院オスペダーレ・マッジョーレ,ベルガモ大聖堂(19世紀に全面改修)等の作品がある。全25書からなる《建築論》では,対話体の物語にそって架空の理想都市スフォルツィンダSforzindaの建設,架空の《黄金の書》にもとづく古代都市プルシアポリスPlusiapolisの様子,作図法と色彩論が語られ,王宮,城塞,集中式教会堂など多様な設計例が紹介される。それらの作例には北イタリアのロマネスク,ビザンティン様式の影響が残り,実施作オスペダーレ・マッジョーレとも共通する折衷的な古典主義は,写稿を通じて独特の理想都市平面とともにスペイン,フランス,東欧,北欧にまで広く知られた。
執筆者:日高 健一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報