フエダイ(読み)ふえだい(英語表記)star snapper

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フエダイ」の意味・わかりやすい解説

フエダイ
ふえだい / 笛鯛
star snapper
[学] Lutjanus stellatus

硬骨魚綱スズキ目フエダイ科に属する海水魚。茨城県以南の南日本とくに太平洋岸に多く、南西諸島、台湾、中国広東(カントン)省沿岸まで分布する。体形はタイ形に似ており、よく側扁(そくへん)し、体高は高い。口は大きく、やや突出する。両顎(りょうがく)前部犬歯が1対ずつあり、側部には1列の円錐歯(えんすいし)が並ぶ。体の側線上方の縦列鱗(じゅうれつりん)は後方で斜め上後方に向かうが、下方の鱗(うろこ)は水平に並ぶ。背びれは10棘(きょく)13~16軟条。最大全長は約55センチメートルに達するが、普通は35センチメートルほど。体は赤色を帯びた暗褐色で、腹部は黄褐色。生時には背びれ第1軟条下の側線上方に1個の乳白色点があるのがこの種の大きな特徴。沿岸の岩礁やサンゴ礁域で単独または小群で生息する。肉食性魚類。飼育魚では産卵期は5~7月、夜半遅くに数尾の雄が1尾の雌を追尾し、海表面で産卵と放精をする。卵径は約0.8ミリメートルで、分離浮性卵。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長2.5ミリメートルで、孵化後3.5日で3.4ミリメートルほどになる。主として一本釣りで漁獲されるが、定置網、追込み網、三重刺網(さしあみ)などでもとれる高級魚。淡紅白色の肉で、刺身、塩焼き、煮つけなどにすると美味である。鹿児島県ではホシタルミ、宮崎県ではシブダイ、沖縄県ではイナクーとよぶ。

 フエダイ科魚類には、ミクロネシアなど南洋で、アレルギーや中毒症状を呈するシガテラとよばれる中毒があることが知られている。とくに黒点のある種に多い。この科の日本本土に産する有用種にはクロホシフエダイヨコスジフエダイオキフエダイヨスジフエダイ、バラフエダイなどがある。

[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「フエダイ」の意味・わかりやすい解説

フエダイ (笛鯛)
Lutjanus stellatus

スズキ目フエダイ科の海産魚。いわゆるタイ型の体型だが,頭部先端がややとがっている。体色は褐色でやや橙色を帯びる。腹部のほうが色が淡い。頭部に青い1縦帯があり,背びれ軟条部の前端下部で側線より2~3鱗上部に白色の丸い斑点がある。茨城県から沖縄まで分布。八重山列島,南西太平洋,インド洋では知られていない。全長40cmほどになる。従来,フエダイにはL.rivulatusの学名があてられていたが,真のL.rivulatus(ナミフエダイ)とは異なることが明らかにされ,L.stellatusの新学名が提唱された。ナミフエダイは頭部には22~24本の波状の青色縦線があり,体部のうろこに灰白色の点をもつ。また,体側の白斑は側線上にあり,これらの点などでフエダイとは異なっている。南西太平洋,インド洋,紅海アフリカ東岸まで広く分布するが,日本では石垣島から知られているだけである。全長70cmに達しフエダイより大型。

 なお,フエダイの名はフエダイ科Lutjanidae魚類の総称としても用いられる。タイとはつくがタイの仲間ではない。フエフキダイほどではないが,頭部の先端がややとがり,笛を吹くときの口つきに似ているのでこの名がついた。英名はsnapper。本科は東部太平洋を除く世界の暖海に広く分布する。多産する種もあり,重要な食用種も含まれる。またシガテラ毒をもつことが知られている種(日本近海では沖縄のバラフエダイ,イッテンフエダイなど)もあるので注意が必要。全世界で約300種,日本近海で50~60種いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フエダイ」の意味・わかりやすい解説

フエダイ
Lutjanus stellatus

スズキ目フエダイ科の海水魚。全長 55cm。体は楕円形で側扁し,背部が丸い。吻はややとがる。上顎に 4本の犬歯がある。体は黄橙褐色で,腹方は淡い。両眼の間に鱗がない。本州中部から南シナ海にかけて分布する。食用魚。

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