航空機事故の原因を解明するために、操縦室内の会話や管制機関および他機との交信、警報や機器の操作音などを録音しておく装置。操縦室内の音声を録音するため、一般にCVR(cockpit voice recorder)とよばれている。録音には30分以上(120分までのものもある)のエンドレステープを使用し、古い内容を消しながらつねに少なくとも最後の30分間の状況が録音されている。録音装置では、4チャンネルの音声録音とそのモニターができる。4チャンネルとは、機長、副操縦士、航空機関士の音声通信と操縦室上部に設けられた集音マイクによる操縦室内の会話に区分され、それぞれ別々にプレイバックして聞くことができる。モニター機能では、録音されているかどうかを判定する目視計器がついている。また録音された内容をただちに消去できる機能も有している。録音テープは、事故の際でも記録内容を確実に保存するために、熱や衝撃に耐えられるカプセルに収められ、破壊、燃焼、破損のおそれの少ない場所に取り付けられている。カプセルは、1100℃の温度に30分間、1000Gの衝撃に0.011秒間耐えられ、海水やジェット燃料に48時間浸されてももちこたえる強度をもち、発見が容易なようにオレンジ色に塗られ、白色の反射テープが巻かれている。航空運送事業のために使用される航空機にはCVRを装備し、発動機を始動させたときから飛行の終了後発動機を停止させるまでの間、常時作動させることが義務づけられている。
[青木享起・仲村宸一郎]
正しくはコクピットボイスレコーダーcockpit voice recorderといい,略してCVRあるいは操縦室音声記録装置とも呼ばれる。飛行中の航空機の操縦室内の音声を連続的に記録する装置で,乗員の会話,管制官との交信,エンジン音,各種の操作・作動音,警報音などを収録する。フライトレコーダーと同じく事故の原因解明に使うのが主目的で,民間の輸送機には搭載が義務づけられている。録音には30分のエンドレステープが使われ,つねに最終の30分間の音声が収録されるが,乗員のプライバシーに関連することが多いので,ふつう,飛行が正常に終わった場合には着陸後乗員の手によって消去されることになっている。ボイスレコーダーは事故の際にも損傷を受けないよう,海水やジェット燃料の中で48時間以上,1100℃の温度に30分以上,1000G(Gは重力加速度)の衝撃に0.011秒以上耐えるようにつくられたカプセルに入れられ,フライトレコーダーとともに火災の影響を受けにくい部分に取りつけられている。
執筆者:関川 栄一郎
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