フロックコート(読み)ふろっくこーと(英語表記)frock coat

翻訳|frock coat

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フロックコート」の意味・わかりやすい解説

フロックコート
frock coat

18世紀末から 19世紀後半にヨーロッパの男性が着用した最も一般的なコート型の表着。市民服の典型とされたが,背広服が普及する 19世紀後半以降は,次第に正装と化し,さらに第1次世界大戦以降は一部の礼装として残存する以外,今日ではほとんどすたれた。ごく初期には,身体にぴったりしたジュストコールに対して,同型の総体的にゆったりした膝丈の表着をさしており,一般にゆるやかな服をさすフロックの語が用いられた。のち長ズボンの採用に伴い,ウエストラインで切替えて,そこからスカート状の垂れ部をつけた両前 (ダブル) 形式の表着をさすようになり,それがフロックコートの典型となった。日本では明治から大正にかけて男性の洋服礼装となり,初期の軍服も,基本的にはこの型を踏襲していた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロックコート」の意味・わかりやすい解説

フロックコート
ふろっくこーと
frock coat

19世紀に、男子が昼間の平常着として着用したコート。打合せはシングルまたはダブルでウエストラインに切り替えがあり、スカート部が膝(ひざ)の近くまでの長さで円筒状に保たれている点が、当時着られた他のコート、つまりテールコートモーニングコートと異なっている。生地(きじ)は、黒または暗灰色のチェビオット・ウールやウーステッドを用い、灰色、黒の縞(しま)または格子柄(がら)のズボンを組み合わせ、対比的な色や材質のチョッキが着られた。1850年代の終わりに男子の日常着として、後のスーツ(三つ揃(ぞろ)い)の原型となったサックコートsack coatが現れ、しばらく共存していたが、19世紀の末に向かって廃れていった。なお一部に正装として残された。

[菅生ふさ代]


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