チョッキ(読み)ちょっき(英語表記)jack

翻訳|jack

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョッキ」の意味・わかりやすい解説

チョッキ
ちょっき
jack

中世歩兵が防護用に用いた、キルティングや詰め物をした革製の袖(そで)なし胴着、あるいはそれに似た形をした服のこと。ヨーロッパ中世の王侯貴族が小作人階級を軽蔑(けいべつ)してジャクリーjacquerie(小作人という意味のjacques bonhommeにちなむことば)とよんだことから、しだいにジャクJaques, Jacquesが小作人のことを、さらにはジャックjacqueが小作人の短い上着をさすようになって、冒頭の意味に転じたものと思われる。

 日本では1864年(元治1)に長州征伐のために編成された幕府軍の軍服に、小胴衣、舶来胴衣、唐人胴衣などの名称で用いられ始めたといわれる。チョッキという俗称は、1868年(明治1)ごろには定着したものと思われるが、英語のジャケットjacketからの派生語だとする説(和英語林集成)、あるいはオランダ語のjakの訛(なま)った語とする説などがある。現在では、英語のウエストコート、ベスト、ときにはフランス語のジレとほとんど同義に用いられている。

 正式の男物のスーツ、タキシード燕尾(えんび)服にはチョッキが用いられることが多く、平常着には共布で、礼装用には別布でつくられる。第二次世界大戦後、礼装以外のチョッキ着用は省略されるようになったが、着用の有無は流行によって決まる。また、上着とは異なった色柄のものをアクセントとする目的で着用することもある。概してチョッキの後ろ身頃(みごろ)には滑りのよい拝絹地などが用いられ、襟はあったりなかったりで、打合せはシングルかダブル、ポケットは2~4つなど、その上に着用する上着の種類によってデザインが異なる。スーツ用以外のものには、ある目的をもつもの(乗馬用のライディング・ベスト、聖職者のためのクレリカル・ベスト、防弾チョッキ、スポーツ・ベストなど)や、素材からみて、毛糸で編んだニッティド・ベストや毛皮ファー・ベスト、ホワイトグースのダウンの入ったダウン・ベストなどがある。

[田村芳子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョッキ」の意味・わかりやすい解説

チョッキ

ウエストないし腰丈程度の洋服型の袖なし胴衣。オランダ語のヤック jak,あるいは直着 (ちょくぎ) が転訛した語とされ,英語ではウエストコート waistcoat,ベスト vest,またフランス語ではジレ giletという。 17世紀になると西洋の男性の表着が,コート型の長上衣となって,その前を開いたままで着用するのが慣例化したが,当時の胴衣はもも丈で,なかには袖付きのものもあった。これが今日のチョッキ型に変るのは 18世紀末,男性の市民服がフロックコートモーニングコート型になって以後のことである。 19世紀に入っても,上衣,ズボン,チョッキはそれぞれ別布仕立てが一般であったが,同中期以後になるとスーツ (三つぞろい) の概念が一般にも定着するようになった。今日では広く男女に着用され,前開き形式でボタン留めかファスナーが多い。

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