知恵蔵 「フロリダ銃乱射事件」の解説
フロリダ銃乱射事件
事件の現場となったのはゲイの同性愛者が集まるナイトクラブ「パルス」で、自動小銃を乱射したのは同州に住む29歳のアフガニスタン系の男。容疑者は同日未明からの警察への数回の電話で、イスラム国(IS)のメンバーだと自称したり、シリア爆撃の中止を求めたりして立てこもった。早朝に突入した警察と銃撃戦になり現場で射殺された。当初、ISが関与したテロ事件の可能性も疑われたが、インターネット上の過激な情報に触発された個人的な犯行とみられている。同容疑者は、同州出身のアラブ系の男がヌスラ戦線に加わり14年5月にシリアで自爆テロを行った事件について関連を疑われたことがあるが、関係はないものと判断された。また、ISの公式ラジオ放送が容疑者をたたえたものの、その論調からはISによる直接の指示や連携があるとは考えられない。家族などによれば、容疑者はメッカに巡礼するなどイスラム教への傾倒を深めると共に、同性愛者(LGBT)に対する憎悪感情を持っていたという。米国内でもLGBTに対する差別や偏見は少なからずあり、ゲイバーやゲイクラブは、そうした迫害から逃れられる自由で安全な場所と考えられていただけに、事件の衝撃は大きく多数の著名人らからメッセージが寄せられた。また、米国大統領や次期大統領候補らも、性的少数者への憎悪犯罪であるとして厳しく批判している。
(金谷俊秀 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報