日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブダイ」の意味・わかりやすい解説
ブダイ
ぶだい / 不鯛
部鯛
武鯛
parrotfish
[学] Calotomus japonicus
硬骨魚綱スズキ目ブダイ科に属する海水魚。密生した歯が口からはみでて、怒ったような顔をするのでイガミまたはエガミ(西日本)ともいい、また海藻を好んで食べるのでモハミ、モハン(九州)ともいう。
房総半島および兵庫県香住(かすみ)地区以南から南西諸島、小笠原諸島、韓国釜山(プサン)、台湾に分布する。鱗(うろこ)は大きく、側線鱗(そくせんりん)は23枚前後。側線は体の背縁寄りに走り、尾柄(びへい)の前端近くで急に側中線を通る。尾びれの後縁は緩やかに曲がる。雄はやや青みを、雌は赤みを帯び、体側に青色またはバラ色の複雑な斑紋(はんもん)が散在する。体長40センチメートルに達する。水深10メートル前後の岩礁域などに生息する。産卵の盛期は夏で、沖合いに数百の雌が集まり、その近くで雄が縄張りをつくる。満潮が過ぎるころに、つがいで産卵する。熟卵は直径0.6ミリメートルと小さく、25℃の水温中では24時間で孵化(ふか)する。孵化後まもない仔魚(しぎょ)も小さく、全長1.6ミリメートルぐらいである。1年で全長14センチメートル、3年で29センチメートル、5年で36センチメートルほどに成長する。あごの歯が強いうえ、のどにも頑丈な歯があるので、海藻、石炭藻、エビ・カニ類、造礁サンゴ(ポリプ)などをかみ砕いて食べる。とくにサンゴ片のように消化できないものは、かみ砕いたのち口の外に吐き出す。水温15~23℃のときに餌(えさ)を活発に食べる。動作はやや緩慢であり、昼間は潮通しのよい場所でくぼみや溝などを通って遊泳して餌をあさる。夜間は岩礁の割れ目に帰って休息する。
肉は柔らかくてあまり美味でないが、冬には刺身、フライ、ちり鍋(なべ)、煮つけなどにされる。夏は味が落ちる。
[落合 明・尼岡邦夫]
釣り
一年中、釣ることができるが、秋から冬にかけて味がよいので好シーズンである。磯(いそ)釣りでねらうが、冬にハバヒロノリ(ハバノリ、ハンバノリともいう)とよぶ海藻がつくと、これを餌にしたウキ釣りのハンバ・ブダイ釣りが静岡県伊豆(いず)地方で人気を集める。早期はダイコンの葉、ホウレンソウが代用餌として活躍する。
釣り場は、海底が岩礁の根になっている所がよく、この根のわきに餌を流す。したがって、ウキから鉤(はり)までの長さの調節がたいせつである。竿(さお)は5メートル級、大・中型スピニングリール、オモリ負荷2~8号の棒形ブダイ専用ウキを使う。足場の高い釣り場ほど道糸は太めとする。
真冬以外は、磯のカニを餌に、ブッコミ釣りでねらうが、これをカニブダイとよんでいる。これも海底の変化を十分に知ってねらうのがこつになってくる。
[松田年雄]