薩南諸島の一部をなす列島。古くは七島,川辺(かわなべ)七島,宝七島などと呼ばれた。鹿児島県鹿児島郡十島(としま)村を形成し,諸島間の交通が不便なため村役場は鹿児島市にある。第2次大戦後はアメリカの軍政下にあったが,1972年日本に復帰した。総面積101.35km2,人口657(2010)。屋久島と奄美(あまみ)大島の間,七島灘と呼ばれる東シナ海の海域に北東から南西方向に,約160kmにわたってほぼ2列に島が点在,東側には北から口之島,中之島,諏訪之瀬島,悪石(あくせき)島,小宝島,宝島,西側には北から臥蛇(がじや)島,小臥蛇島,平(たいら)島が並び,南方に離れて横当(よこあて)島がある。北緯30度線が最北の口之島を通る。最大は面積27.5km2の中之島。横当島は古くから,臥蛇島は1970年から無人である。大部分は火山島で,とくに諏訪之瀬島の御(お)岳は1813年(文化10)に大爆発を起こしている。また,宝島,小宝島にはサンゴ礁が発達し,鍾乳洞もみられる。ビロウ,ガジュマル,アコウが茂り,口之島には香りの高いタモトユリが自生し,中之島には野生馬のトカラウマが生息する。風光にすぐれた温暖な気候であるが,一方,台風の進路にもあたりその被害が大きい。
農業は米,サトウキビ,野菜などをわずかに産するのみであるが,近年は肉牛の放牧が盛んに行われ,畜産が農業粗生産額の大半を占めている。紬(つむぎ)を生産するほか,悪石島ではたけのこの缶詰を製造する。魚群が豊富で,サワラ,シビ,カツオ,トビウオ,イセエビなどの漁業が行われ,夜光貝,エラブウミヘビ(エラブウナギともいう)を特産する。また口之島,中之島,悪石島,小宝島に温泉がある。鹿児島港から村営定期船が各島に通じる。
執筆者:服部 信彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鹿児島県屋久(やく)島から奄美(あまみ)大島に至る約200キロメートルの間に、約180キロメートルにわたって点在する微小な島々。北緯30度の口之島(くちのしま)を最北の島として28度50分の横当島(よこあてじま)までの12島をさす。鹿児島県鹿児島郡十島村(としまむら)に属する。トカラ列島県立自然公園に指定される。全島が火山島であるが、現在活動を続けているのは諏訪瀬島(すわのせじま)と中之島の2島である。地体構造的には、北から口之島、中之島、諏訪瀬島、悪石(あくせき)島が新期造山帯に、その西側にほぼ平行に並ぶ小臥蛇(こがじゃ)島、臥蛇島、平(たいら)島、小島(こじま)、小宝(こだから)島、宝島、上ノ根(かみのね)島、横当島が古期造山帯に属する島弧である。これら島々のほとんどが周囲を急崖(きゅうがい)で囲まれるが、小宝島と宝島は隆起サンゴ裾礁(きょしょう)によって縁どられ、ほかの島々とは異なった景観を示す。常時黒潮の流路となっているため、気候は温暖で島々は亜熱帯性植物で覆われる。12島のうち小臥蛇島、臥蛇島、小島、上ノ根島、横当島の5島は無人島である。産業面からは取り上げるほどのものはなく、1952年(昭和27)日本復帰当時約3400人であった人口も2010年には600人台へと減少した。公共交通機関として、現在村営船「としま」丸が4日に1便島伝いに鹿児島市との間を往復している。古代に「道之島」とよばれた往時の島々は、現在夏の観光客を細々と受け入れているにすぎない。
[塚田公彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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