日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブティア」の意味・わかりやすい解説
ブティア
ぶてぃあ
jelly palm
[学] Butia
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)ココヤシ亜科ブティア属の総称。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ原産で、21種ある。かつてココヤシ属Cocosに含められていたが、1916年以後、ブティア属として独立した。本属の各種名は種子の形状だけによって分類されており、未整理の部分がある。幹は単一で直立し、高さ5~15メートル、径40~50センチメートル。幹肌に、長期間固着したのちに脱落した葉柄基の葉痕(ようこん)が波状紋をつくる。葉は長さ1~2メートルで、葉軸は上半部が外方に急曲し、末端は下垂する。羽片は50~70対あり、灰緑色で堅く、葉の中軸からV字状に直伸する。葉柄は0.7~1.2メートルで、両側に強い刺(とげ)があり、葉柄基は条繊で覆われる。雌雄同株で単性花をつける。仏炎包は長さ1.2~1.5メートル。肉穂花序は長軸から細長い枝柄を分岐し、枝柄の基部近くには雌花の両側に2個の雄花がついた3個1組の花が多数つき、枝柄の末端部にわたり雄花が密生する。花は一斉に開き、まもなく落下する。雄花には6本の雄しべと、中央に不稔(ふねん)の雌しべがあり、雌花には3柱頭の雌しべがある。果実は径2.5センチメートル、黄色または帯赤色で、中果皮はゼリーに加工できる。種子は長さ1.5センチメートル、径0.8~1.8センチメートルの卵形または球形で、種子内周囲のやや斜め下に3個の珠孔があり、胚乳(はいにゅう)部に隔室のあるものは室数だけ発芽する。
次の2種がよく知られる。
ブティア・カピタータB. capitata Becc. (=Cocos capitata Mart.) ブラジル原産。葉は2.7メートル、葉柄も同長。果実は長さ2.5センチメートル、径2センチメートル、種子は卵形で長さ1.5センチメートル、径0.8センチメートル。
ブティア・ヤタイB. yatay Becc. (=Cocos yatay Mart.) ウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン原産。ブティア属中ではもっとも大きく、優良品種で、高さ15メートル、葉は長さ3.5メートル。果実は黄色、先のとがった円錐(えんすい)台形で長さ4~5センチメートル。底部の径3.5センチメートル。種子は黒褐色で、頭部が針状に鋭くとがり、底部もとがった披針(ひしん)形で、長さ3~3.5センチメートル、径1.5~1.7センチメートル。
[佐竹利彦 2019年5月21日]