日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブライ」の意味・わかりやすい解説
ブライ(Robert Bly)
ぶらい
Robert Bly
(1926―2021)
アメリカの詩人。中西部のミネソタ州に生まれる。ハーバード大学卒業後、フルブライト留学生としてノルウェーに行き、北欧の詩の翻訳と紹介を行う。詩集『雪(ゆき)野原の静けさ』(1962)で自然の内面性を深くとらえて注目を浴びた。次の『体のまわりの光』(1967)では、神秘主義的な傾向を深めると同時に、ベトナム戦争下の外面的世界をも扱い、全米図書賞を受けた。『ベトナム戦争反対の詩』(1967)を編集するなど、詩人の立場から盛んな反戦活動を繰り広げたが、その後の詩集『この樹(き)は千年もここに生きつづける』(1979)では、ふたたび自然の内面的な神秘性を追究。1981年の詩集『黒衣の男身をひるがえす』以来、アメリカの現代社会における父性の喪失に関心を強め、1990年にグリムの童話のユング的解釈にたつ評論『アイアン・ジョン』を出版して、大きな反響をよんだ。翻訳詩集も多数ある。
[新倉俊一]
『谷川俊太郎他訳『ロバート・ブライ詩集』(1993・思潮社)』▽『ロバート・ブライ編著、葉月陽子訳『翼ある生命(いのち)――ソロー「森の生活」の世界へ』(1993・立風書房)』▽『野中ともよ訳『アイアン・ジョンの魂(こころ)』(1996・集英社)』▽『荒木文枝訳『未熟なオトナと不遜なコドモ――「きょうだい主義社会」への処方箋』(1998・柏書房)』