精神病院(読み)セイシンビョウイン(英語表記)mental hospital

デジタル大辞泉 「精神病院」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐びょういん〔‐ビヤウヰン〕【精神病院】

精神科病院

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精選版 日本国語大辞典 「精神病院」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐びょういん‥ビャウヰン【精神病院】

  1. 〘 名詞 〙せいしんかびょういん(精神科病院)
    1. [初出の実例]「彼女は是より精神病院(セイシンビャウヰン)に送られしが」(出典:鬼心非鬼心(1892)〈北村透谷〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「精神病院」の意味・わかりやすい解説

精神病院 (せいしんびょういん)
mental hospital

精神障害者の治療・保護の目的でつくられ,入院と通院設備を備えた施設をいう。以前には瘋癲ふうてん)院,癲狂院,脳病院などの名称が用いられたが,のち精神病院と呼ばれ,近年は精神科病院と称せられる。

精神障害者の収容施設の歴史は古いが,記録に残る最古のものは491年エルサレムに開設されたものとされている。以後,8世紀ころ,バグダード,ダマスクス,カイロなどイスラム圏において施設がつくられた。西欧諸国では,精神障害者は犯罪者同様に取り扱われ,16~17世紀には魔女の扱いを受けたこともある。1547年にロンドンベスレヘムのセント・メリー僧院にベスレーム収容所Bethlehem Asylumが創立されたが,18世紀末までは医学的な処置はほとんど施されなかった。1751年にロンドンに設立されたセント・ルーク収容所が精神病院の嚆矢(こうし)といわれる。93年にビセートル精神病院の院長となったP.ピネルは,フランス革命の最中に,諸方面の反対を押し切って患者を鉄鎖手枷足枷から解放し,精神障害者を病める一人の人間として扱うことを試みた。その後継者のイギリスW.チュークはヨーク・リトリートYork Retreatを設立して,精神障害者の開放療法をすすめ,19世紀にはイギリスのヒルG.Hill,コノリーJ.Conollyらにより無拘束主義が発展した。20世紀に入ると,経済変動を核とする社会変動に伴って精神病院は閉鎖主義に逆行して再び暗黒時代を迎えた。そして第1次,第2次大戦下では,多くの患者が食糧難などの犠牲となった。このような風潮のなかで,ドイツのジーモンHerman Simon(1867-1947)は作業療法を精神病院内の治療行為に用い,これを体系化し(1929),これが各国に普及するようになった。第2次大戦後,向精神薬療法が開発されてから,治癒率の向上に伴い精神病院の収容中心主義が反省され,開放的治療が促進されるに至った。これに伴い,精神病院の構造も近代化され,監禁中心の牢獄風の部屋や大部屋は使用されなくなり,一般病院におけると同様の病室と広いデー・ルームをもつとともに,作業施設,リハビリテーション施設を併設する建物に代わった。また,大部分の精神病院では救急病棟,合併症病棟のほか,デー・ホスピタルナイト・ホスピタル,その他の社会復帰のための施設を併設している。開放療法を行うため,鍵をかけない病棟の割合もしだいに増加している。また治療のための入院在院期間も3~6ヵ月を超えない例が増加している。

日本では,11世紀末から始まるとされる,京都岩倉村の大雲寺を中心とする患者の共同生活(岩倉保養所)が前身的性格をもっていたが,最も古い精神病院は,安永年間(1772-81)に越後国鵜ノ森(現,新潟県加茂市鵜ノ森)に永井慈現が創立した鵜ノ森狂疾院であろう。公立の最古のものは1875年,京都南禅寺境内に開院した京都癲狂院である。東京における精神病院の最古のものは1846年(弘化3)奈良林一徳の開設した狂疾治療院といわれている。現存する日本の公立病院の最古のものは東京府癲狂院(現,東京都立松沢病院)である。

 2003年現在における日本の精神病院数は1667,病床数は35万5269であり,人口1万対27.9床となり,在院患者数は32万9555人である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「精神病院」の意味・わかりやすい解説

精神病院
せいしんびょういん

精神科病院

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世界大百科事典(旧版)内の精神病院の言及

【医療】より

…西欧の診療所に比して日本のそれでは,医療設備において著しく重装備であることは,診療所の病院化であり,医薬分業の不徹底,専門医制度の未発達など医療のなかの分業体制が判然としていないことは,診療的性格が日本の医療の基調であることを示すものであろう。また,西欧ではとくに公的施設として設置運営される精神病院や結核・癩病者の療養所,最近では老人病院や身障者の施設などにおいて,私的な経営になるものの比率が高いのも,日本の特徴である。 このような体質のうえに,戦後健康保険が普及し,しかも,その報酬の支払い方が個々の診療行為についてそれぞれ単価を定める,いわゆる出来高払方式を採用したために,検査や与薬,注射など,この方式になじむ診療部分の濃厚化と,それになじまない患者の心理面や生活面への配慮の希薄化が批判されるようになった。…

※「精神病院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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