アブラナ科の一・二年草。キャベツの1変種で,カリフラワーの原種と考えられている。和名の別名をメハナヤサイ,ミドリハナヤサイともいう。キャベツ類のとう立ちをした花軸を利用することからこの名がついた。葉は濃緑色で欠刻があり,主茎の頂部または葉腋(ようえき)から出た側枝の頂部には発達した濃緑色のつぼみの集合体を形成する。品種には早晩性があり,頂花蕾(ちようからい)専用種と側花蕾も利用できるものとがある。ローマ時代からキャベツ類の緑化した花梗green shootが利用され,イタリアでは重要野菜として改良が加えられてきた。初期の品種は花蕾群も小さく,おもに柔らかい茎が食用とされていたものと考えられている。イタリア,フランスなどの地中海沿岸の暖地で発達しヨーロッパに広がった。18世紀になるとイギリスでは白色小球種,緑色茎用種,紫色小球種などが栽培され,さらに19世紀に入って早晩,大小,白,紫などの品種が区別されるようになった。アメリカには19世紀以後にイタリア人により導入されたが,一般化しなかった。しかし,第2次大戦中に家庭菜園用の野菜として広く栽培されるようになり,アメリカでは比較的新しい野菜といえる。日本には明治初年に導入され,京浜地方で作られたが普及せず,第2次大戦後に都市近郊で作られはじめ,昭和40年代から50年代になって本格的に普及するようになった。春まきと夏まきとがあり,愛知,千葉,埼玉の各県に多く栽培されている。緑色野菜として栄養価が高い。洋風にはボイルしてマヨネーズをつけてサラダにして食べることが多いが,シチューやグラタンに入れてもよい。和風では酢の物やてんぷらによく,すき焼の材料にしてもおいしい。なお,日本の園芸学上ではイタリアンブロッコリーItalian broccoliとして別変種var.italica Plen.にする場合が多い。
執筆者:平岡 達也
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アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の二年草。和名をイタリアカンラン、ミドリハナヤサイともいう。キャベツの変種で花のつぼみが発達したものを食用にする点で、カリフラワー(ハナヤサイ)に似るが、つぼみ部分はカリフラワーほどの白い花球(curd)にならず、やや肥大した緑色のつぼみの塊となる。このころの姿はカリフラワーに比べて茎が立って20センチメートルほどになるので、キダチハナヤサイともよばれる。また茎頂だけでなく、上部の葉腋(ようえき)にも小さいつぼみの塊をつける品種があり、コモチハナヤサイという呼び名もある。茎葉全体が紫赤色で、つぼみの塊も紫色の品種もある。
煮物やスープ、サラダなどにして、特有の風味が好まれる。ヨーロッパではカリフラワーとともに古くから広く親しまれている野菜であるが、日本には明治時代に導入され、カリフラワーに続いて、1980年代に需要を伸ばした。普通は5~6月に種子を播(ま)き、11月に収穫するが、暖地では7月播き翌年1~2月どりの栽培もある。
[星川清親 2020年12月11日]
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