改訂新版 世界大百科事典 「ブンブクチャガマ」の意味・わかりやすい解説
ブンブクチャガマ (分福茶釜)
Schizaster lacunosus
ウニ綱ブンブクチャガマ科に属する棘皮(きよくひ)動物。相模湾以南からオーストラリア,アフリカ東岸まで分布し,水深5~90mの砂泥地にすむ。殻長5cm,殻幅4.5cm,高さ3.5cmくらいで,上から見ると幅の広い心臓形,横からは三角形に近く,後端面は垂直になっている。和名はこの形によるという説もあるが,よくわからない。殻は薄くてもろい。殻の上面の中心よりやや後方に2個の生殖孔があり,それより花紋状歩帯が放射し,そのうち前方の1本が幅広くて長く,殻の前端に達して深いくぼみをつくる。側方にある2対の歩帯はそれよりも短くて狭い。各歩帯から生ずる管足は場所によってそれぞれ機能が異なっている。花紋状歩帯からは鰓管足がでて,呼吸器官の働きをする。下面の葉紋部からは長い房毛管足がで,先端部にある多くの房毛状突起で有機物片を口へ運ぶ。また囲肛部の付近からでる肛下管足は,すみ家を掘る際に役だてる。
囲肛部は殻の後端の上方にある。周口部は前端のくぼみのすぐ後方腹面にあって,半月形,その後縁は唇状に周口部の上に突出している。間歩帯にあるとげは中空で細く,軸の下部表面は繊毛でおおわれている。これらのとげは場所によって長さや向きが異なっている。また幅が1mmほどの細い帯線に生ずるとげは全長にわたって繊毛が密生し,先端がラケット状になっている。この繊毛で水流を起こして呼吸や排出などを助けている。日本には本種のほかにS.pacificusが瀬戸内海,鹿児島湾などの水深70m前後から知られる。有用種ではない。
→ウニ
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報