改訂新版 世界大百科事典 「プテリン」の意味・わかりやすい解説
プテリン
pterin
チョウの翅(ギリシア語でpteron)などから得られる有機化合物で,補酵素の一つである葉酸やビオプテリンの分解物。淡黄色の小さな結晶で,分子式はC6H5N5O。融点は高く,300℃。エーテル,アルコールに不溶であるが,アルカリ,酸に可溶。その水溶液は特有の強い蛍光を発する。その誘導体を有するチョウの翅やカイコの幼虫などが,紫外線で青紫色に光るのはそのためである。化学的には2-アミノ-4-ヒドロキシプテリジンの通称名で,上の5位と6位に,表のような側鎖がつくと種々の化合物が得られる。プテリンがプテリン脱アミノ酵素の作用を受けると,ルマジン(2,4-ジヒドロキシプテリジン)になる。プテリンとその誘導体は,昆虫以外にも細菌から高等動物・植物に広く分布しており,とくに高等生物では,芳香族アミノ酸代謝関連酵素の補酵素をはじめ,プリン代謝,メタン合成,タンパク質生合成などで,重要な生理的役割をになっている。
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報