改訂新版 世界大百科事典 「グリオキサール」の意味・わかりやすい解説
グリオキサール
glyoxal
化学式OHC-CHO。最も簡単なジアルデヒド。融点15℃,沸点51℃(776mmHg)。結晶は黄色。エチレングリコールHOCH2CH2OHあるいはエチルアルコールCH3CH2OH,またはアセトアルデヒドCH3CHOを硝酸でおだやかに酸化すると,グリコール酸HOCH2COOH,グリオキシル酸OHCCOOHとともに生成する。工業的には,エチレングリコールを銀または銅触媒の存在下,約300℃で空気により気相酸化して製造する。純粋なグリオキサールは不安定であるため,水溶液または水和物として用いられる。アルデヒドとしての一般的性質を示し,アルカリの作用でカニッツァーロ反応を起こし,グリコール酸を生成する。
OHC-CHO+H2O─→HOCH2COOH
グリオキサールは,官能基2個から成るため反応性に富み,有機合成に広く利用されるほか,繊維および紙の架橋(表面処理)に用いられる。
執筆者:奈良坂 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報