改訂新版 世界大百科事典 「プライスリーダーシップ」の意味・わかりやすい解説
プライス・リーダーシップ
price leadership
寡占的な市場構造があり,相互に代替性の高い商品のグループ間で,商品の価格決定権が特定の企業の手にあって,他の企業はこれに追随するという行動がみられるとき,プライス・リーダーシップによる価格形成がなされているという。このときリーダーシップをとる企業は価格先導者(プライス・リーダー),これに追随する企業は価格追随者(プライス・フォロワー)と呼ばれている。このような形での価格形成は,市場の構造が次のような特徴をもつとき,しばしば観察される。その第1は,ある特定の企業のマーケット・シェア(市場占有率)がその他の企業に比べてぬきんでて大きいという場合である。このとき市場はガリバー型寡占とも呼ばれるが,他の企業は競争を挑むことをせずに,大企業に価格の決定をゆだねるという形で市場価格が決定される。第2には,いずれの企業もそのマーケット・シェアにほとんど差がなく,どの企業も規模の大きさで他を圧倒することはできないが,知名度や歴史的な経緯によって,特定の企業が価格を変更するときは,つねにその口火を切るという場合である。
いずれのケースでも,価格先導者となる企業が長期にわたってその地位を維持しつづけるか否かは,先導者と他企業との関係を決定している技術的条件,需要の動向および参入の可能性に依存する。またプライス・リーダーシップのもとで形成された価格の水準が,競争的な価格とどれほど異なるかは,価格先導者がカルテルのリーダーとみなしうるか否かにかかっている。一般にカルテルを隠密に維持しつづけることはきわめて難しいので,プライス・リーダーシップのもとでの価格を,独占価格に近いものとみなすことは単純にすぎるといわれている。しかし,市場における競争が不足して,特定の企業に価格決定権が集中するような市場構造は,良好な市場成果を妨げるおそれがあるので,競争政策上はつねに監視の対象とされている。
執筆者:南部 鶴彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報